米朝首脳会談の展望:朝鮮半島からの米軍撤退が進み、中国・ロシア・韓国経由の制裁逃れが拡大

第二回米朝首脳会談が決定しました。

まぁいつドタキャンされるか分かりませんが、今回は本決まりと見て良さそうです。

場所はまだ未定ですがベトナムが有力の模様。

もうめんどくさいから毎回板門店でいいんじゃないの?と思うんですけどね。

報道するメディア関係者もホテルの予約が大変なんですから、あちこちでやるのはやめてあげた方がいい気がします。もはや象徴的な意味も徐々に減退してきてますから、事務的にやればいいでしょう。

さて本題です。

この第二回米朝首脳会談はどうなるか?

 

各国メディアの観測はどうか?

日本や米国からは悲観的な報道が多めです。

韓国の保守系メディアは警戒一色。左派系は「明るい未来がやってくる!」というお花畑な希望的観測に満ちた報道多め。

中国やロシアは「歓迎する」という社交辞令報道。

個人的にはトランプ大統領が超高いハードルを提示して交渉が破綻し、強烈な米韓合同軍事演習が復活し、厳格な制裁路線に戻ってほしいですが、おそらくそうはならないでしょう。

可能性が一番高いのは、朝鮮半島から米軍が縮小・撤退していくようななんらかの合意が結ばれ、その代わりに北朝鮮のICBM破棄や寧辺核施設の査察付き閉鎖が行われるのではないかと思います。

「朝鮮半島の非核化」に沿った段階的な措置です。

アメリカが良ければ他はどうでもよく、在韓米軍を撤退させたいトランプとしては、米国を攻撃できるICBM破棄を勝ち取れるなら撤退に喜んで応じるはずです。

アメリカ国民も、ICBM破棄でアメリカが核攻撃を受けるリスクがなくなれば、当然喜びます。同盟国の安全を売って、アメリカの安全だけ買ったと批判する人など一部の専門家だけです。

めでたくトランプの外交功績となります。

では、北朝鮮が一番望む制裁解除はどうなるか?

当然、国連制裁は解除されず、維持されます。

報道では、北朝鮮が最も望む”制裁解除”がどうなるかが注目されていますが、国連制裁が解除されることはありません。

あったとしても、せいぜい人道支援の拡大でしょう。

それで北朝鮮が納得するのか?

当然します。

なぜか?

朝鮮半島から米軍が縮小・撤退することで大喜びする、中国やロシアが制裁逃れ貿易を拡大してくれるからです。

中朝間の石油パイプラインだって、いったいどれだけ流れてるかなど誰も分かりません。口裏を合わせてこっそり制裁以上の石油を流すくらいは平気でやるでしょう。

実質的な制裁解除が得られるんですから、北朝鮮は喜んでICBM破棄と一部核施設の査察と引き換えに、トランプと合意するはずです。

首脳会談での共同声明や合意事項は「平和」「緊張緩和」「朝鮮半島の非核化推進」などが謳われ、査察付きのICBMや寧辺核施設破棄がトランプ大統領へのプレゼントとして渡されます。

米国側は「ICBM破棄でアメリカの安全は確保された」とアメリカ国民に猛アピールすることでしょう。そして、「完全な非核化まで制裁は維持」ということを繰り替えし強調し、「譲歩などしていない」「北朝鮮に騙されてなどいない」と、首脳会談結果を否定する人たちに反論するはずです。

トランプ大統領は「俺はなんら譲歩ぜず、北朝鮮から譲歩を得られたぞ!」「過去の政権が出来なかったことを俺はやり遂げた!すげぇだろ?」と自画自賛すること間違いなし(笑)

一部の同盟派の専門家が「韓国や日本の安全を売った」と批判するでしょうが、トランプから「自国の安全は自分で守るのが当然。なぜアメリカ人が血を流して守らなくてはいけないのか?」という正論でやすやすと論破されます。

トランプ支持者もその考えに賛成するはずです。トランプ支持者どころか民主党支持者も多くは同意見のはずです。

終戦・平和協定はさすがに時期尚早でしょうが、「双方威嚇的な軍事行動をやめる」くらいの文書には署名すると思われます。

その結果、米韓合同軍事演習はどんどん縮小されます。

在韓米軍の費用負担交渉では、米国が高い金額を要求し、その結果交渉がこじれ、米国「金を出さないなら撤退するぞ!」、韓国「そんな無理難題を押し付けるならもう徹底してもらって結構!」というプロレスを繰り広げ、米軍撤退へとつながると予想されます。

韓国人の反米感情を刺激し、「いつまでもアメリカを頼るな」「自主防衛だ」とナショナリズムも扇動して在韓米軍を縮小させれば、文政権の支持率はたいして落ちません。

文大統領が「在韓米軍は韓米間で決めること」と言って、在韓米軍撤退はないかのように印象操作をしていますが、言い換えれば韓米どちらかが撤退を決めれば撤退できるということです。

そりゃ北朝鮮が決めることではないですが、「北朝鮮からの要請に応じて」、韓米両国の意思で撤退を決めれば撤退できるということ。

それを「北朝鮮に決定権はない」と言っているだけ。

詐欺ですよ、詐欺。

「北朝鮮がなんと言おうが、在韓米軍は維持する!」くらい言わないと信用できません。

そして北朝鮮から核実験やミサイル発射など、目に見える威嚇がなければ、一般大衆は徐々に興味を失います。

興味を失えば票になりません。

票にならないことには政治家も興味を持ちません。

北朝鮮からの威嚇もなく、叩くことで票にもつながらなければ現状維持で良しとなるでしょう。

国連制裁という法律が維持されたところで、それを誠実に履行しなければ経済制裁は有名無実化します。

いざというときに元に戻せるよう、国連制裁を公式的に解除することはないでしょうが、監視するマンパワーが落ちれば中朝国境の密貿易や、中国・ロシアの朝鮮人労働者受け入れは増えます。

中国から北朝鮮への観光客も増えるでしょう。

そのための交渉は金正恩が中国へ行ったときにやっているはずです。

「半島からの米軍撤退に力を尽くすから制裁逃れに協力してくれ」と言えば、中国やロシアは喜んで協力するはずです。

そして韓国も「人道的救助」に名を借りた漁船への燃料補給をせっせと続けるでしょう。韓国政府も制裁逃れに加担している気はなく、本気で南北も「信頼醸成」のために善意でやっている行為だと思っていますから、いくら制裁違反だと非難しても無駄です。

「これは人道援助だ!悪意のレッテル貼りはやめろ!」と反論されるだけ。

めでたく韓国海軍と海上警備隊は、北朝鮮の”海上無料ガソリンスタンド”として働き続けることになります。

米朝首脳会談ではおそらく触れないでしょうが、”米朝首脳会談の成功”を受けて、開城工業団地再開、鉄道・道路連結、金剛山観光復活を成し遂げるべく、文政権が全ての外交パワーを結集して、これらが制裁の例外対象になるようひたすら説得するはずです。

米国はこの執拗な説得活動に音を上げて、そのうち例外として認めると思います。

金正恩はそこまで見込んでいるのでしょう。

ダメならダメで、それで良し。

韓国から例外対象の要請を米国が断り続ければ、徐々に韓米関係も悪化します。

どちらに転んでも北朝鮮にとってはメリットは大きい。

だからこそ第二回米朝首脳会談を決めたのだと思います。

さて、こうなると困るのは日本です。

北朝鮮に圧力を加えたくとも、穴だらけの制裁になってしまっては効果なし。

中露に制裁をちゃんと履行せよと言っても、「ちゃんとやってるよ!」と言うでしょう。

個別の制裁違反を見つけても「あ、見落としてました。違反者が見つかったのでちゃんと処罰します。以後気を付けます」で終了です。

絶対真面目に取り締まりません。

実際は国家が主導して制裁逃れに加担してのに、日本がそれを証明することも困難です。

守る気のない奴に約束を守れと言っても無駄。

違反時に罰則を科すこともできなければ守らせることなど不可能です。

もはや以前にも投稿した『対北朝鮮外交:朝鮮半島不介入条約で日朝国交正常化』のようなプランで日朝交渉を進めるしかなくなってきます。

こうなるとめでたく北朝鮮の外交的勝利です。

核を維持したまま、制裁逃れの非合法貿易や、南北での例外措置対象となった経済交流で北朝鮮経済を立て直す。

これを勝利と言わずしてなんと言うのか。

2月下旬の米朝首脳会談は、十中八九この流れになると思います。

個人的には交渉が破綻して圧力路線に戻ることを祈っていますが、漏れ出てくる報道を見る限りその可能性は薄そう。

北朝鮮の住民が圧政から解放されることを願っていますが、その可能性は消えつつあります。

悲しことですね。無念の極みです。

それにしても北朝鮮の外交力は大したもの。内政は極悪なのに、生き残るための知恵と粘り強さは一級品ですからね。

いまいましい限りです。