どんどん激化する米中貿易戦争。
中国は一生懸命「お互いに損するだけ、貿易戦争い勝者なし」と説得してますが聞く耳なしの米国。
トランプの言動ばかり注目されますが、議会もなかなかの対中強硬派ぞろい。
中間選挙が終わったら沈静化するなか~と思ってましたが、こりゃ長期化しそう。中国が知的財産権や中国企業の株式所有の制限とかで、先進国並みに改善しない限りずっと続きそうです。
中国だけでなくEUやカナダ・メキシコなんかもマトにされてます。
ですが同盟国・友好国への圧迫にはメディアも議会が否定的ですから、米国からの輸入を増やすなり、現地生産(=米国に雇用)を増やすなりすれば矛を収める可能性はあります。
まぁ日本はなるべく目立たないようにして、EUとのEPA早期発効やTPPの拡大をしれっと実行していくのが良さそうです。
信越化学のように、シェールガスを利用した工場を米国で操業開始するなんて素晴らしい対応だと思います。ナフサに比べてコストが半額と、不利益覚悟でやるのではなくちゃんと利益が出る見込みがあるのが素晴らしい。(参考記事:信越化学、米国に塩ビ新工場 シェール使い割安に )
中国の対抗関税もトランプの支持率にはあまり効果がなさそうです。まぁまだ始まったばかりですから今後に注目でしょうが、米国の農家を狙い撃ちにした対抗関税でトランプ支持率が落ちるどころかアップする始末。
「銃で武装するのは国民の権利である」というバリバリの武闘派地域を攻撃しても反感買って結束を高めるだけで意味なし。むしろ逆効果になってます。
今思えば、完全にスルーして沈黙という対応の方がマシだったかもしれませんね。
トランプや米国の報道官が関税圧力強めてガンガンに中国非難しても無反応。
実際にこんなことが起きたら「中国すげぇな」と国際社会がビックリするでしょうね。
それにしても習近平がトランプを紫禁城で大歓待してた頃がもはや大昔のことのように思えます。こんな180度変わるとは。本当にビビる。
北朝鮮情勢も順調に融和の演出から180度反転しそうな雰囲気。
我慢強さのかけらもないトランプ大統領がさっそく事態が全然進展しねぇぞと不満たらたら。
制裁に穴開けまくってる中国が悪いと米中貿易戦争の悪化要因となっています。
貿易戦争に勝者なしと識者が言っていますが嘘です。
前の投稿にも書きましたが、よりダメージの小さい方が勝者でしょう。
だって戦争ですから。
あばらを2,3本へし折られたとしても、相手をぶっ殺せれば勝利です。それが戦争というものです。
経済の世界でもよくある話です。
ある企業が値下げ競争でシェア争いを行い、ライバル企業が対象分野から撤退するか倒産した後に値上げして独占的に利益を得る。そんな事例は履いて捨てるほどあります。
米中貿易戦争だってそれと同じでしょう。
今のところ米中貿易戦争には米国が勝利しつつあります。
経済絶好調の米国と比べ、中国は微妙。
製造業も関税を嫌がって海外へ移転する可能性が高い。
輸出主導から内需主導に中国の市場構成が変わるなら中国が勝てる可能性もありますが、「人民元安」で関税を相殺しようとしているようでは無理です。日本がそうでしたが、内需型になる過程では「自国通貨高」になるのが普通です。
しかし、中国にそんな予兆はなし。
中国の対抗関税で米国の農家や畜産業者がダメージを受けていますが、中国の製造業も苦しいでしょう。
部品の調達を中国から他国へ変える事例も増えている模様です。タイの報道で貿易摩擦のおかげで輸出が増えてると喜びの報道がありました。
まぁそうなりますよね。
中国は大豆の関税UPなど、共和党支持基盤の農家を狙い撃ちしてますが、工場と違って農場はそうそう気軽に移転などできません。
調達先を変更すると言っても、米国のように大規模かつ品質の安定したところ探すのも大変。
結局高値で買い、中国の消費者が被害をこうむりそうな予感がします。
長期化すればオーストラリアなり、アルゼンチンなり他の生産地から調達することも増えるでしょうが、いますぐは厳しい。
他にも長期化すれば「原産地ロンダリングビジネス」が始まると思われます。
台湾やベトナムなどの東南アジアで大豆を加工して中国へ輸出する、なんてビジネスが始まること間違いなし。大豆なんてそのまんま使うような用途は少ないですから。
それに関税UPした金がどこかに蒸発するわけでもない。
関税UPしたのに貿易の物量が変わらなければ、税収がUPします。
中国が元安で米国への輸出量を維持すれば、米国の関税収入が上がります。
その税収を関税UPで狙い撃ちされた農家にでもバラまけば、トランプを恨むどころか感謝する人たちが出てくるでしょう。さっそく120億ドルをバラまいてます。
専門家は批判しまくってますが、もらう人たちは共和党に投票するでしょう。
鉄鋼やアルミの関税UPも、中国の失政で生まれた過剰生産によるデフレで潰された米国企業が息を吹き返しているわけです。
もちろん全般的ではないですが、中国による安値競争で疲弊して潰れていった企業からしたら、操業再開は「トランプのおかげ」と思うでしょう。
この人たちが感謝感激してトランプの共和党に投票することは確実です。強固な支持者になってくれるでしょう。
中国への通商圧迫をやめたところで、トランプ批判をしている人たちがトランプを褒めたたえて投票してくれるはずもない。
いくら嫌われたところで、0は0です。
そんな人たちなんざ切り捨てて、自動車関税上げるぞ!と脅して米国生産を増やし、そのおかげで職にありつけるひとを増やして己の支持者にした方が選挙に有利です。
鉄鋼やアルミの関税UPだって、そもそもは中国のとんでもねぇ過剰生産のせいで世界中が大迷惑をこうむったのが原因です。
中国の鉄鋼やアルミは国からの潤沢な保護を受けているのに、何も対抗しなければ米国の鉄鋼・アルミ企業が軒並み倒産していくだけです。
みんな米国の保護主義を批判しますが、中国の方がはるかに保護主義的なわけです。中国はそういうもんだとみんなあきらめてるから誰もあまり文句を言わないだけで、保護主義のレベルでいえば中国の方が圧倒的です。
だいたい企業に共産党の組織をつくってその指導を受けるべし、なんてルールを作るのが中国です。日本で例えるなら、トヨタやソニーに自民党の支部があって経営者がその指導を受けるようなもの。そんな国、中国くらいですよ。
EUや日本への通商圧迫は交渉を有利に進めるためのカードという側面が強いでしょうが、こと中国に対しては原因が中国の”体制”にあるので問題は根深い。
この辺の発言にもそれが表れています。
「習近平国家主席は貿易摩擦解消に向けた交渉を邪魔している」
「技術移転の強要や貿易慣行の改善を拒否している」
日本やEU相手にこんな「基本的なこと」で文句はきません。
中国がアメリカを追い抜くためには、「技術を低コストで奪う」ことと、自国の「国営企業優遇策」は譲れない武器です。
この武器を破壊しない限り、米中貿易戦争は終わらないでしょう。