ISとの戦いで勝利宣言を行い、シリアからの撤退を推し進めるトランプ大統領。
このことに危機感を覚えているドイツのメルケル首相が、米軍の性急な撤退に反対しています。
ただ、その理由がまったく共感できない内容でした。
トランプ大統領が「近々ISへの勝利宣言を出すぜ!」「勝ったから米兵は母国に帰るぜ!」と演説。
それを受けてドイツのメルケル大統領。
「米軍が突然、そして性急にシリアから撤退するのはよい考えなのか」「撤退はイランやロシアが影響力を再度強めることになりはしないか」とのことです。
これはひどいな~と思いましたよね。
ロシアからはガスを買い続け、買い続けるだけでなく輸入量を拡大させているドイツ。
最前線でロシアの脅威にさらされているバルト三国やポーランドが文句を言っても無視。
本来味方であるはずのドイツが、敵に金を流してるんだから相当イラついていることでしょう。
味方に背中撃たれているようなものです。
イランに対しては、核合意維持を理由に、イランとの貿易促進を目的に欧州で特別目的事業体(SPV)を設立して、米国主導のイラン制裁に抜け穴を作る始末。
これで「イランやロシアの影響力が増す!」という理由で米国のシリア撤退を批判するとは驚きます。
イランとロシアの影響拡大を懸念するなら、イランへの経済制裁に協力し、ロシアからガスを買うのをやめるべきでしょう。
が、そんなことはしないドイツ。
この二重基準を卑劣だとも問題だとも思っていないのだとしたら、ドイツの国際政治を見る目はだいぶ曇っていると言えそうです。
まぁ自国の利益を第一に考えるなら、メルケル首相の言うことも理解できます。
ドイツ経済のために割高な液化天然ガスより安価なロシア産ガスの方を選ぶ。
米軍がシリアから撤退して中東情勢が不安定化して難民でも発生すれば、またEUに負担がかかる。ゆえに自分が楽するためにも米軍が残って苦労してほしい。
以上、ドイツの本音。
そしてアメリカの本音は「シリアがカオス化しても、アメリカに難民が来るわけでもないし、石油も自給自足できてる。なんのメリットもないのに中東の治安維持に米兵の血を流す意味あるの?」というところでしょう。
伝統的な米国とヨーロッパの同盟関係もだいぶ揺らいでいます。
ある意味韓米同盟よりヤバイかもしれません。
EUが一枚岩ならトランプの圧力を突っぱねることもできるでしょうが、ロシアの圧力と難民の玄関口になっている東欧や南欧諸国のEUや独仏への不満はなかなか大きい。
もはやこんな感じで分裂しているEU。
メルケル首相やマクロン大統領が一生懸命トランプに抵抗していますが、結局わかったことは時間が経過するにつれ、むしろトランプ寄りの国や政党がEUに広がるという残念な結果です。
この傾向は当分止まらないでしょう。
これを右傾化とみるか、現実主義化と見るか。
人によって意見は分かれそうです。