トランプ大統領 中東政策の大転換を決定

トランプ大統領がシリアからの撤退を決定した模様です。

報道ではマティス国防長官をはじめ、色んな高官の反対を押し切って独断で決定した!というような報道です。

が、これは嘘です。

それこそ就任当初から中東から撤退する気満々でした。

そして、この判断は何もトランプ大統領の個人の考えから出てきたわけではなく、リアリスト系国際政治専門家たちの総意と言えます。

韓国のリアリスト系国際政治専門家の李春根博士もこの点を指摘しています。

 

トランプ大統領の主な言動は、米国内の著名な現実主義国際政治学者たちの「米国はヨーロッパを同盟国と見なすべきか、そしてロシアを敵と見なすべきか」という主張と一致する。ミアセイマー教授らは「米国はもうドイツから手を引け」とまで主張(Foreign Affairs 2017・7、8月号)(←2016年の間違い)した。

同氏は「ロシアはドイツを攻撃できるほど強くなく、ドイツはロシアに征服されるほど弱くない」と指摘し、米国がドイツから地上軍を撤収する時が来たと主張した。実は、ヨーロッパの国々はドイツが統一されるとき皆、反対した。

トランプ大統領が推進すべき外交政策の方向を提示したミルズ(Daiel Quinn Miills)とローズフィールド(Steven Rosefielde)教授は、「
(1)世界が多極世界になったことを認めよ
(2)米国国内の福祉を最大化する外交政策を維持せよ
(3)膨大な核兵器を維持しているロシアと第2の冷戦をせず、cold peaceを維持せよ
(4)イランの野望を制御せよ
(5)中東地域での国境線の再編を受け入れろ
(6)中国を封鎖すること
(7)日本を強化すること
(8)インドを強化すること
(9)ヨーロッパがいかなる方向へ進んでも放って置け、仮に欧州が崩壊しても。その理由はヨーロッパが果たして米国の同盟国なのかわからない
(10)高品質の製品を生産する米国の企業を維持、保存するため貿易政策を変更させよ
」である。

トランプは、これらの主張をほぼ受け容れていると見られる。トランプは、大統領になってから米国の利益を強調したが、お金のためではなく、巨視的、戦略的目標を持っている。今、経済力をもって中国の挑戦を牽制すれば、米国は覇権国としての地位を維持できると見る。

トランプ政権をどうみるか―李春根博士 パラダイムの変化を捉えよ 21世紀のニクソン・ドクトリン』統一日報記事

世界三大戦略家の1人、ジョン・ミヤシャイマー氏のフォーリン・アフェアーズへの寄稿を引用し、的確に米国の世界戦略の転換を見抜いています。(この論軍が掲載されている号『フォーリン・アフェアーズ・リポート2016年7月号』、定期購読しているならこちらから全文が読めます。『アメリカはグローバルな軍事関与を控えよ ―― オフショアバランシングで米軍の撤退を』)

こういう李春根博士のような知識人が韓国で主導的な立場に立てば、韓国の未来も明るいですけどね。。。

まぁそれは置いておいて、数年前から中東から大々的に手を引く、というのは米国エスタブリッシュメント層の総意だったと思います。

トランプのシリア撤退決定に驚いた、という報道がなされていますが、何を今さらです。

米国第一主義の現政権が、中東の人々のために米兵の血を流す決断をするはずもありません。

シリアに続いて、アフガニスタンからも軍隊を撤退させるようです。一気に半減です。この決断ができるのはトランプ大統領以外いないでしょう。

米国の意思は明確です。

「ISが復活しようが、タリバンが舞い戻ろうが、米国は知ったこっちゃありません。勝手に殺し合いしてください。以上」

もしそうなった場合に、被害を受けるのは女子供などの弱者です。

が、米国は何もしない。

せいぜい金を出すか、中東有志連合軍の支援やEU諸国に発破をかけるくらいでしょう。

文句を言うのはお門違いです。

その手の人々には「そうしたくなければ、もろ手を挙げて米国の中東関与を歓迎しなければいけなかったでしょ?でもあんたら中東を混乱させてるのは米国だ!みたいな批判してたじゃないですか?」と言いたいです。

米国がアフガンに侵攻してタリバンをぶちのめしたから、女の子が学校で教育を受けれて、女性が自由に外出できて、議員の女性割合を義務化して女性の社会進出も進んできたわけです。(まぁ女性議員一定割合強制はかなり強引ですけども)

そういう点は評価せずに「米国が中東情勢を悪化させた」「米軍の空爆で犠牲が出た」「米軍が捕虜を虐待した」とずーっと批判し続けてきたのが世界のリベラルたちです。

せっかく進展した男女平等や人権状況もタリバン政権が戻ってくれば一気に巻き戻されるでしょう。

女性はロクに教育も受けれず、男性に従属することを強要される社会へと逆戻りします。

賭けてもいいですが、その時に世界のリベラルたちはタリバン政権ではなく、トランプ批判に力を入れるでしょうね。

なんでやねんって感じですよ。

どう考えても一番に批判すべきはタリバン政権や中東の独裁者たちでしょうに。

女の子に教育を受けさせず、無教養の状態に留めおこうとし、警官が女性をレイプするのがタリバン政権です。北朝鮮と変わりません。

米軍にはもう10年くらい踏ん張ってほしかったですが、度重なる軍事費支出と、良かれと思ってやっていることが良い面は無視して悪い面ばかりを何年も何年も言い募られてればさすがに米国だって嫌になるでしょうよ。

左派はこういうところが微妙ですよね。

批判だけで良い結果を生んでることには見向きもしない。

あんたらただの反米主義者じゃないの?と言いたくなります。

残念ながら米国が中東から手を引くのは不可避でしょう。

ロシアとの関係改善まで進めば、まさにミアシャイマー教授の提言通りにことが運ぶことになります。

今後は中国封じ込めに米国は力を集中することと思われます。

欧米各国が「シリアから撤退するなんて聞いてないよ!」と反発しています。

まぁ当然です。

中東が混乱すれば大量の難民が陸路で続々と欧州に入ってくるわけですから。

被害は甚大です。

それに比べて中東で混乱が起きても、米国へは大西洋を渡らなくてはならず、難民が大量に押し寄せることもありません。なーんにも困らない。

中東に力入れるくらいなら、中南米で同じことをやって地域を安定化させる方が米国的にはプラスになります。

原油もシェール革命で自給自足できてますし、中東に深く関与する理由はもはやありません。

サウジが駐留費出して必死に引き留めていましたが、あっさり撤退決定です。

米国としては、「俺は困らない。被害を受ける欧州各国が頑張ればいいんじゃないの?」という感じでしょう。

冷たいもんですが、人間そんなもんです。文句を言っても仕方ない。

そもそも中東各国が殺し合いをやめられないのが根本原因ですし。

宗教と民族と国家と外国勢力が複雑に入り乱れて、「敵の敵もみんな敵」というバトルロワイヤル状態です。「原油価格」という世界リスクがなければ誰も関わりたくないでしょうね。

米国が中東から撤退するのも、「中東に自由・人権・民主を定着することは不可能だった」というあきらめが根底にあります。ある意味「中国が豊かになれば欧米のように民主化する」という幻想と似ています。

欧米の軍隊が引き揚げれば「異教徒の軍隊に支配されている!だから俺たちは困窮しているんだ!」という主張で支持を集めていたイスラム原理主義者たちも空中分解するかもしれません。(まぁ逆に凶悪なイスラム原理主義者が武力で権力握って独裁国家を建設する可能性も多分にありますが)

どちらにせよ、どうなろうが米国と同盟国に脅威を与えない限り放置する、という対応へと中東政策を転換することは間違いない。

もう一人の世界三大戦略家のエドワード・ルトワック氏がトランプもそのような指摘をしていました。

ルトワック氏はトランプを改革者だと評価しています。

マティスを首にしたのも、米国の世界戦略の大転換についてこれないからでしょう。

「まともなマティス国防長官を狂ったトランプが辞任に追い込んだ」的な報道がなされています。

そういう面がまったくないとは言いませんが、大戦略レベルでの判断において大筋で正しいのは、トランプ大統領の方だろうと思います。

ICBMや核のような米国に脅威となる兆候が出れば空爆で処理。

通常兵器で中東の人々が殺し合いする分には無視。

こうなるでしょう。

冷たい対応だと批判する人には、今まで米国が中東で戦争してきたことをさんざん非難してきたくせに、何を言ってるんだと言いたいところです。