相変わらず毒だらけの北朝鮮の新年の辞

新年の恒例行事、北朝鮮の新年の辞。

韓国メディアを中心に、分析記事が出ています。

この恒例行事も北朝鮮が核武装を進め、国際テロを平気でやる狂人国家ならではです。

核兵器がなければ、どの国も北朝鮮の新年の辞など見向きもしないでしょう。

驚いたことに党員集めて拍手連発スタイルはやめて、執務室の椅子に腰かけ、国民に語り掛けるやり方に変えたようです。普通の国家アピールの一環でしょう。

北朝鮮の意思を予想する上で、世界中の北朝鮮専門家が注目する新年の辞ですが、あいかわらず今年も毒だらけの内容です。

 

最後に全文を載せていますが、「同志のみなさん!」というフレーズが区切りになって国内、南北関係、国際関係(対米関係中心)という感じでまとまっています。

量的には国内経済や軍や組織への言及が大半。

電力が大事だ、そのためには石炭だ、風力も太陽光もやるぞ、経済をチュチェ化しろ、自力更生だ、農業も大事だ、漁業も頑張れ、山林も増やすぞ、鉄道・道路も大事だ、うんたらかんたら、とずーっと経済強化を謳っています。

そんなに経済を発展させたいなら思想教化やガッチガチの監視社会・統制経済をやめて自由化すれば一発なんですが、そんな発想は皆無です。

その辺は「全社会の思想的一色化と党と人民の一心団結を実現」、「社会主義の自立的経済の威力を一層強化」、「社会主義国家の政治的・思想的力を全面的に強めるべき」、「チュチェの人民観、人民哲学を党と国家の活動にしっかり具現して広範な大衆を党のまわりに結束させるべき」、「社会主義文明建設を推し進めるべき」などなどのフレーズから読み取れます。

「社会主義」や「チュチェ」という思想教化用語が乱舞してます。まさにこの不自由な思想が北朝鮮の経済発展を阻害する理由です。

経済発展の一番ネックになっていることをやめる気がないのに、いくら「人民よ、経済建設のために立ち上がれ!」と呼びかけたところで、当の人民からしたら「お前が邪魔なんだよ」としか思えないでしょう。

それはそれとして、対外関係に言及した部分は後半の3割ほど。特に危険なのは南北関係への言及です。

1年で3回も首脳会談をやったのは今までになかったぞ、わが民族同士で朝鮮半島の平和定着への意思はゆるぎないと自画自賛から始まります。まぁこれは韓国側も同じですが。

あいかわらず毒を混ぜてくるな~と思ったのは、「北と南が平和・繁栄の道を進むと確約した以上、朝鮮半島情勢緊張の根源となっている外部勢力との合同軍事演習をこれ以上許してはならず、外部からの戦略資産をはじめ戦争装備の搬入も完全に中止されなければならないというのが、われわれの主張です」という部分。

外部勢力=米軍との合同軍事演習をこれ以上やるなと要求。

去年の南北協議で、「在韓米軍撤退は求めない」、「軍事演習については理解を示した」と北朝鮮が言ってくれてるよ~とアピールしていた気がしたのですが、案の定、実質的な在韓米軍無力化を要求してきました。

うまいな~と思うのは、在韓米軍撤退や同盟破棄を要求しているわけではなく、「合同演習停止」と「外部からの戦略資産をはじめ戦争装備の搬入の完全な中止」を要求していることでしょう。

演習ダメ、装備も搬入するな、でも在韓米軍撤退を要求しません。

こんなもん詐欺ですよ。

「米軍兵士という職業はそのままでもいいが、武装解除して一般人として韓国に滞在するのは認めます」と言っているようなものです。

本当にやったら実質的な在韓米軍撤退でしょう。

他にも南北交流についての言及が危険極まりない。

「北南間の協力と交流を全面的に拡大、発展させて民族の和解と団結を強固なものに」と言いながら、「さしあたって、われわれは、開城(ケソン)工業地区に進出していた南側の企業人の困難な事情と、民族の名山を見たいという南の同胞の願いを察して、なんの前提条件や対価もなしに、開城工業地区と金剛(クムガン)山観光を再開する用意があります」とアピール。

「同胞の願いを察して、なんの前提条件や対価もなしに」と言いながら、韓国に制裁違反を犯せと呼びかけているわけです。

「制裁の例外として認められるよう韓国が諸外国を説得せよ」という北朝鮮からの指令ですね。

「わが民族の和解と団結、統一の前途を阻む外部勢力の干渉と介入を絶対に許さない」と、徹底して外部勢力=米国を排除せよというメッセージがちりばめられています。

韓米同盟は血盟だとことあるごとにアピールしていますが、在韓米軍費用負担交渉の迷走もあいまって、北朝鮮の狙い通りに事が進む可能性が高そうです。

おそらく韓米の費用負担交渉は延々と交渉が続き、4月に給与差し止めが起き、「横暴な米国の要求に圧迫され続ける可哀そうな韓国」という構図で韓国の対米感情が悪化し、「そんな無茶を言うなら引き揚げてもらって結構!」と文政権とトランプ政権の二人三脚で在韓米軍の大幅縮小、情報部隊だけ残した撤退へと進むことでしょう。

北朝鮮が延々注入し続けてきた対南工作という毒が韓国を蝕みはじめていますね。

まぁしょうがないと言えばしょうがない。きな臭い地域から米軍を引き上げて、現地の同盟国に責務を負わせるというのが今後の米国の戦略です。この機会に、前線は韓国軍、後方支援米国という体制への再編を進めるしかないでしょう。

他人事ではなく日本も似たような展開になりそうです。

在韓米軍縮小・撤退は不可避だとは思いますが、問題は経済の方です。

鉄道連結事業、開城工業団地、金剛山観光といった南北交流事業がどうなるかです。北朝鮮が意味のある非核化措置を取るまで完全停止なら問題ありませんが、「北朝鮮の言う段階的措置を信じてこちらが先に与えようじゃないか」と文政権が諸外国をせっせと説得し出しそうで心配です。

南北関係は、北の芸術団を招待したり、K-POPアイドルを派遣して平壌でコンサート開いたり、スポーツで合同チームを作る程度の交流で停滞するのがベストです。非核化が進展しない限り、何も進めるべきではありません。そんな労力があるなら韓国経済の立て直しに力を入れるべきでしょう。

が、きっと文政権は今年も南北協力に入れ込むでしょうね。そして、その姿勢に諸外国がドン引きし続けることになりそうです。

 

もう一つの重要ポイントである対米関係。

新年の辞では南北関係だけでなく、当然そちらにも触れています。

米朝会談を評価しつつ、「朝鮮半島に恒久的で、かつ強固な平和体制を構築し、完全な非核化へと進むというのは、わが党と共和国政府の不変の立場であり、私の確固たる意志」と非核化やる気ありまっせアピール。

非核化する意思があるという証拠に「われわれはすでに、これ以上核兵器の製造、実験、使用、拡散などをしないということを内外に宣布し、さまざまな実践的措置を講じてきました」とアピール。

ポイントは核兵器を破棄するとは言っていない点でしょうね。

共産主義国家はこういう欺瞞をさせたら天下一品です。

「非核化」の定義もこちらが思う定義と、北朝鮮が思う定義はきっと違うでしょう。

下手したら「核兵器で攻撃しないということが非核化だ」とか言いそうです。

さらには「われわれの主動的かつ先制的な努力に、アメリカが信頼性のある措置を講じ、相応の実際の行動によって応えるならば、両国の関係は、より確実かつ画期的な措置を講じていく過程を通じて、すばらしく、かつ速いテンポで前進するでしょう」と、こっちはやることやったんだから今度はアメリカが経済制裁を解除しろよ、と要求する始末です。

「私は、今後もいつでもまたアメリカ大統領と対座する準備ができており、必ず国際社会が歓迎する結果をもたらすために努力するでしょう」と対話のドアはいつもオープンだと主張。

二回目の米朝会談が開かれないのはアメリカのせいだと言わんばかりですね。

「ただし、アメリカが世界の面前で交わした自分の約束を守らず、朝鮮人民の忍耐力を見誤り、何かを一方的に強要しようとして、依然として共和国に対する制裁と圧迫を続けるならば、われわれとしてもやむをえず国の自主権と国家の最高利益を守り、朝鮮半島の平和と安定を実現するための新しい道を模索せざるを得なくなるかも知れません」と、アメリカが譲歩しなければまた元に戻るぞと圧力をかけています。

まぁ北朝鮮とすればこう言わざる得ないでしょう。

かといって米国が経済制裁を解除する可能性はほぼ皆無。

「米朝会談ヤル気ありまっせ!ただし、米国が譲歩するなら」が北朝鮮のメッセージで、米国も「米朝会談ヤル気ありまっせ!ただし、北朝鮮が中身のある非核化措置をするなら」という考えです。

おそらく外交交渉は停滞し、第三国に対するセカンダリーボイコットをはじめとした制裁の徹底化や、南北協力事業での韓国の勇み足といった「場外乱闘」が今年の注目ポイントになりそうな気がします。

仮に今の状況で米朝会談をやったとしても、前回の内容を再確認して終わるだけです。

個人的には、米国が裏で制裁解除をする意思あり、というメッセージを送って米朝会談を行い、向こうに知らせることなく、会談の場でいきなり「核リストの提示」「査察団の自由な移動と調査」「2年以内の廃棄スケジュール提示」といった超高いハードルを突き付けて交渉を破綻させ、「北朝鮮は米国との約束を破った。非核化の意思は皆無だ」とトランプがブチ切れて一気に軍事攻撃もありえるという緊迫した状況へ転換するのが、好ましい流れに転換させる方法だろうと思います。

本当に戦争をせよと言っているわけではなく、北朝鮮に意味のある非核化措置をらせたいならそれ以外ないということです。

いつも北朝鮮が譲歩の姿勢を示すのは、軍事攻撃されるかも!?という危機感を抱いた場合のみです。

この「軍事攻撃」という選択肢がない状況での外交交渉だと、だいたい北朝鮮側の勝利に終わります。

果たして2019年の北東アジア情勢はどう展開していくのか?

目が離せませんね。

(次ページに金正恩の新年の辞全文と動画字幕付きを掲載)