ロシア人北朝鮮専門家のアンドレイ・ランコフは著書『北朝鮮の核心――そのロジックと国際社会の課題』で、北朝鮮の体制崩壊について3つのシナリオを提示しています。
北朝鮮には市民運動も組織立った抵抗も存在しない。そんな国に訪れる体制崩壊とはいったいどんな形をとるのだろう。
重大な危機が生じて安定が終焉を迎える。そうしたシナリオとして、以下の三つをあげることができる。
(一)指導層の内部対立をきっかけとするもの。
(二)民衆の側による蜂起。
(三)中国で発生した何らかの社会変動が北朝鮮に拡散するというシナリオ、である。もちろん、このすべてが組み合わさることも考えられるし、予想外の展開になることもありうる。
『北朝鮮の核心――そのロジックと国際社会の課題』 P253-254
この中で最も都合が良いのと、都合が悪いのはどのシナリオでしょうか?
もっとも都合が良いのは、1と2の複合版でしょう。
ルーマニアのチャウシェスク政権が崩壊したときと同じことをすればいいだけです。
(NHKスペシャル チャウシェスク政権の崩壊 市民が撮った革命の7日間https://youtu.be/aeu5tKwgk3s より)
北で、「金正恩は倒れるぞ!怖くないぞ!!」というデモが平壌や各都市で勃発するようにするために、連座制・強制収容所・秘密警察を外部の圧力で無力化し、人民を弾圧できないようにするのが大事です。
平和的な体制変更には、「市民運動も組織だった抵抗もない」、という前提を崩す必要があります。
ちなみにこれを北朝鮮はこれを恐れているがゆえに、密告を奨励し、親族を丸ごと人間を家畜化する強制収容所にぶち込む恐怖で、統制していると言えます。
ゆえに、北朝鮮体制変更の第一歩は、連座制・収容所・秘密警察の凶悪3点セットの撃滅が最も重要になります。
次は軍隊の忠誠心を削ることが大事です。軍隊が独裁者への忠誠心を維持している限り、独裁体制から民主主義体制への移行は不可能か、凄まじく困難だと思った方が良いでしょう。
国軍の戦車が市民を乗せて行政府へ行進しています。
こういう絵が北朝鮮で見れるようになれば、北の未来も明るいでしょう。
「国軍はわれわれの味方だ!」
こういう声が出るようになれば独裁体制の維持も不可能です。
金正日はそれを分かっているがゆえに、先軍政治という軍隊最優先の方針を掲げていたわけです。金正日は、チャウシェスク政権の崩壊に震えあがったといいますが、ルーマニア共産党の失敗から良く学んでいると言えます。
最後は独裁者の国外逃亡。
最後は独裁政治の終焉を告げるデモ。
これが、平和的な体制変更の流れでしょうし、これ以外の方法はありえないと思えます。
よく南北統一すれば人権問題も核も拉致もすべて解決するという論調を見かけますが、北の統一詐欺に踊らされている残念な人たちだと言えます。
そもそも改革・開放を経て、自由と民主主義体制に移行して、経済格差もある程度縮まらない限り、「平和的」な南北統一など不可能なはずです。
統一詐欺、わが民族同士詐欺に騙されている人たちはいい加減、目を覚ましたほうがいいでしょう。
ルーマニアの体制変更について、真似しない方がいいだろうなと思ったのがこれ。
「大統領一族は一人たりとも逃がさない」
結局、国外逃亡したチャウシェスクもルーマニアに戻され、銃殺されました。
こういうのはやめた方がいいでしょうね。
三代目を殺したところでむなしいだけでしょう。
それよりも命の安全と海外資産は保障してやるから大人しく北朝鮮から出て行ってください、と言って悪あがきをする気力を削る方が建設的だと思います。
「全部金日成と金正日がやりました!みんな被害者ですっ!!」
で、手打ちするのが無難でしょうね。
「全部ヒトラーがやりました!」「全部東条英機がやりました!」で、手打ちにしたのと同じことをやればいいだけです。
これが一番良い、北朝鮮崩壊のシナリオでしょう。
悪い方のシナリオは、3つめです。
中国で発生した社会変動に巻き込まれる形で北が崩壊するパターン。
これがやっかいです。まったく読めないですから。
混乱が韓国にも波及するでしょうし、日本も韓国よりマシとは言え、多大な影響を受けます。
無政府状態ほど危険なものはないです。
恐ろしいことにこの第三のシナリオが発生する可能性がめきめきと上がってきています。
中国崩壊論が書店に乱舞していますが、実際に崩壊したら世界中にカオスがまき散らされます。
GDP世界第二位の国が崩壊などしたら、世界経済も大混乱です。
たまったもんじゃありません。
中国は崩壊すればいいと思っているような方々がいますが、隣りの家が火事になればいいと思っているようなものでしょう。そういう人を見るとゲンナリさせられます。普通、延焼を恐れて火事にはなってくれるなと思うはずですからね。
不景気というのはありとあらゆるところにひずみを生じさせますね。
世界経済の不調こそが、排外主義や保護主義を蔓延させる根本原因なのですが、リベラルほどデフレという根本原因の除去を邪魔してきます。本当に困ったものです。
そういう点で見れば安倍総理は立派ですね。
TPPも「保護主義が世界中で広がっている中、日本が率先してTPPを推進することに意義がある」という発言など、まさにリベラルこそが言うべきセリフです。
まぁそもそも安倍総理が極右など従北工作員のネット工作の成果ですからね。どっからどう見ても安倍総理はリベラルでしょうに。
そう思わせないように愛国掲げた右翼が安倍支持!と叫んで粘着し、それと呼応するようにリベラルが反アベの大合唱を始めるわけです。
こういう分断工作をやらせたら北朝鮮は天下一品ですね。
そんな暇があるならもっと建設的なことに時間を使ってほしいものです。