北朝鮮 失敗の本質 『粛清の王朝・北朝鮮』

粛清の王朝・北朝鮮』に、北朝鮮がなぜ変革できないのか、その理由が明確に書かれていました。

権力集中が過度に成功したことと、権力継承制度の欠如だと指摘しています。

 

その内容はこちら。

 

失敗の本質 ――北朝鮮の失敗の根本的な原因は、権力集中の過度な成功と、権力継承制度の欠如

北朝鮮の失敗の根本的な原因は、金日成が自身の権力を強化し、集中することに「過度に成功した」ことにある。金日成は、朝鮮戦争のときに強化された権力に対する潜在的な競争相手をすべて粛清したり、海外に追放したりした。

そして、息子である金正日が次に執権して、いわゆる「遺訓統治」を引き継いだ。そのため、先代が犯した失策を反省し、新しい政策を実行する余地がなくなったのだ。このことは、三代目の金正恩まで続き、改革・開放の可能性を閉ざしてしまった。

旧ソ連と中国の例を見ると、先代の指導者の過ちを後継者が批判して、新たな政策路線を追求した。毛沢東の次の鄧小平、スターリンの次のフルシチョフ、そしてゴルバチョフの改革はすべて、指導者の交代に伴って行われたが、北朝鮮ではこれがなかった。

いくら強力な権力を構築しても、いつかは自分の権力を誰かに継承しなければならない。

このプロセスは、自由主義、民主主義が定着した国の人々が考えるほど、簡単なことではなく、時には流血に至る場合もある。革命によって権力を握った第一世代の指導者の困難の一つは、この権力継承プロセスをスムーズに実行することであった。

北朝鮮の場合、〝最高指導者〟は自分の権力を強化することだけに注力したのであって、権力を継承する問題にはさほど関心を払わなかった。金日成は自身の死後、成し遂げたこと、あるいは失敗したことが、スターリンのように批判と改革の対象となることを防ぎたかったのである。金日成はこの「遺訓の浸透」に成功し、それは金正日の死後も続く。

結果的に、北朝鮮という民主主義人民共和国の政治的権威は、金日成、金正日という二体のミイラが握っているといえる。実際に、北朝鮮政権が国民に広めるプロパガンダは、抗日闘争の時代に留まっているのだ。

粛清の王朝・北朝鮮』 Page vii-x

北朝鮮の問題は、失策を反省し方向転換できないこと。これに尽きます。

毛沢東路線と決別して改革・開放を成し遂げた鄧小平。

スターリン批判したフルシチョフや、ゴルバチョフの改革。

これが北朝鮮にはまったくない。

そもそも絶対権力を握る独裁者が、死後自分を否定しない人間を後継者に選ぶために、この失敗の構図が強固に維持されてしまっています。

韓国の理性、李榮薫教授が著書『大韓民国の物語』で、次のようなことを述べておられました。

  • 「歴史とは過去に対する人間たちの記憶」
  • 「歴史に従属し、死者の亡霊が生者の生活を支配していたのが前近代」
  • 「政治とは生者のもの、死者が生者の足を引っぱる行為を防止してこそ近代」

著書自体は、韓国の過激な民族主義に警笛を鳴らす内容ですが、同じ指摘は韓国の100倍は過激な民族主義に凝り固まっている北朝鮮にも当てはまります。

「死者の亡霊が生者の生活を支配していたのが前近代」という指摘は、「北朝鮮という民主主義人民共和国の政治的権威は、金日成、金正日という二体のミイラが握っている」という意見と同じ。

今を生きる人間の未来が、金日成と金正日という二体の亡霊に縛られてしまっている。

この亡霊のくびきから脱することが出来ない限り、北朝鮮の体制が変わって朝鮮人民が幸せになることもないでしょう。

 

冒頭で紹介した『粛清の王朝・北朝鮮』は、第一級の北朝鮮専門家である羅鍾一教授の著書です。今までほとんど邦訳されていなかった羅鍾一教授の本ですが、韓国でベストセラーになったこの本が邦訳されました。喜ばしい限りです。この本をきっかけに他の本もどんどん邦訳してほしいですね。

粛清の王朝・北朝鮮