『北朝鮮に憑かれた人々』 朝鮮戦争は北が仕掛けたという事実から逃げた進歩的知識人

左派の凋落の第一歩は、朝鮮戦争について「北朝鮮の侵略戦争」という点から逃げたことでしょう。

最初は、アメリカ帝国主義勢力が北侵したという疑惑や嘘を拡散し、それが間違いだと分かると「いずれが戦端を開いたかはともかく」と記述を変えて逃げうつ始末。

さんざんアメリカと韓国を侵略者としてこき下ろしていたのに、それが逆になったら「冷戦がもたらした分断の悲劇」だのと大きなくくりにして問題点をうやむやにする。今もこういう姿勢は左派よりの日本人・在日知識人・韓国人に実に多い。

だいたい同族相争う戦争を引き起こしたのは金日成であり北朝鮮なのに、なぜその罪を問わないのか謎だ。もしこれが李承晩とアメリカが最初に仕掛けた戦争なのであれば、侵略者呼ばわりして徹底して叩いているはず。

アメリカや韓国保守を叩くことには喜々として頑張るのに、北朝鮮を非難する場合にはえらく擁護する姿勢には困ったものである。

そして、そういう人たちの言説がまとまっているのが『北朝鮮に憑かれた人々―政治家、文化人、メディアは何を語ったか』。

もはやネタ本。北朝鮮のプロパガンダを信じた人たちがいかに多かったかがよく分かります。

 

朝鮮戦争は韓国の北侵から始まった?

北朝鮮は、かつてマーク・ゲインが諧謔(かいぎゃく)をこめて「アリスの不思議の国」と呼んだことがあるが、まさにジジョージ・オーウェルの描いた世界そのままである。

全国至るところに建てられた金ピカの金日成の銅像、各家庭にまで恭しく飾られた金日成・金正日父子の。御真影へ選局ダイヤルを固定したラジオから聞こえる長い長い「首領様」讃歌。権力を子息に世襲させる「社会主義」国家。

貿易代金も払わず、西側の銀行団にデフォルトを宣告されながら、第三世界に巨額の援助を続けてきた国。

なけなしの外貨を「記念碑的建造物」やイベントに浪費する一方、ラングーン事件や大韓航空機爆破事件などのテロ、日本人の誘拐などを繰り返し、国際的に孤立を深めているこの金王朝を、日本の進歩的文化人らは、どのように描いてきたのだろうか。

進歩的文化人らの最初の瞞着というか錯誤といえるものは、一九五〇年六月に勃発した朝鮮戦争が、米・韓の北侵で始まったという北朝鮮側の宣伝を、そのまま鵜呑みにしてマスコミに書きちらしたことだ。

その典型が、戦争が膠着状態に入った五二年十月に発行された『平和』増刊号(淡徳三郎編集)「特集/朝鮮戦争の真相」である。

この増刊号は全編、北朝鮮やソ連など東側が発表した文書に依拠して編集されており、北朝鮮側の宣伝文書のような観があるが、戦争の発端についてもアメリカの命令で韓国軍が北侵したとしている。

しかし、当時の韓国軍はきわめて弱体であり、その装備は、火砲も一〇五ミリ榴弾砲が最大で、北朝鮮が多数装備していたソ連製のT34型戦車を撃破できる対戦車砲もなかった。重砲も戦車もなく、空軍はあったが育成中で軍用機は小型低速の練習機、連絡機しかなかった。

兵力も名目上は八個師団あったが、そのうち四個師団は二個連隊編制で警備旅団に毛の生えた程度のものにすぎず、後方配備の師団では小銃すら定数に満たなかった。

また弾薬の備蓄も一、二日分しかなく、一月に締結された米韓相互援助協定による軍需物資は、六月下旬にはまだ到着していなかった。そして米軍は、前年の四九年六月までに韓国から撤収を完了している。

こんな状態で戦争を始めたとすれば狂気の沙汰だが、『平和』特集号は米軍の撤収をも、「ひとつには占領軍の撤退を要求する朝鮮全人民の声におされ、ひとつにはこの北朝鮮攻撃が韓国軍独自の行動であることをよそおうため」としている。

北朝鮮に憑かれた人々―政治家、文化人、メディアは何を語ったか』P98-99

今から思えば狂気の沙汰ですが、これが当時本気で信じられていたんだから笑えません。

「弾薬の備蓄も一、二日分しか」ない状態で、戦争仕掛けたのなら狂ってますよ。

仮にアメリカを責めるなら、ソ連を信じて北朝鮮は攻めてこないと思ったことでしょう。

戦争が起きるのは侵略的な側が軍事力で圧倒したときです。

戦争を起こしたくないのなら、防御側がきちんと軍備増強しなくてはいけません。

平和を愛する心で戦争など防げません。平和を欲するなら勢力均衡を真面目に考えるべきしょう。

それが朝鮮戦争の教訓だと思います。

アメリカが愚かにもソ連を信じて撤退し、戦争を起こしそうだからと韓国軍を弱体なままで放置した結果が朝鮮戦争です。

この戦争がなければ、あれほどガッチガチに38度線で分断されることもなく、中朝国境のようにこっそり行き来することもあったかもしれません。東西ドイツのように。

血で血を洗う戦争のせいで憎悪と猜疑心が燃え上がり、分断の固定化につながったと言えます。

そういう点で、南北分断の”固定化”をもたらしたA級戦犯は金日成と言えます。

(次ページに続く)