破綻へと向かう韓米軍事同盟

もう韓米同盟は維持できないかもしれません。

締結間近と言われ続けて、とうとう期限の年末ぎりぎりまで引っ張ってしまった「韓米駐留費負担協議」。今日から第10回協議に入ります。

10回って。

どんだけもめてるねん。

トランプ大統領は「2倍の負担増」を求めている模様。

これがトランプ流の「交渉戦略」なら今回の協議で合意されそうですが、本気で2倍の負担増を求めているなら韓米同盟破綻も遠くないと思われます。

穏便に締結されることを祈っていますが、米国側は結構本気で強烈な負担増を求めていそうです。

そうなるとどうなるか?

 

おそらく韓米双方引く気はなく、米国は「費用を負担しないなら出て行くよ」と韓国に詰め寄り、韓国は「そんな条件は飲めないのでやむえませんね」となる可能性があります。

きっと文大統領は米国側の「横暴な要求」を強調して、韓国国民の反米情緒を刺激し、反米左派の支持層を繋ぎとめることでしょう。

米国の言う通りに軍事費負担したら、支持層である左派が離れるだけです。現実的に米国を繋ぎとめるために大幅負担増を飲んだとしても、その結果右派から支持されるわけでもない。

妥協するより突っぱねる方が選挙戦的には得でしょう。

米国もソウルという脆弱性を抱える韓国を防衛する義務がない方が、よっぽど北朝鮮に対する軍事戦略に幅が出ます。

以前の投稿でも書きましたが在韓米軍撤退は韓米双方にとって悪いことばかりではありません。(参考投稿『もはや韓米同盟がない方が北朝鮮への圧力になる』)

ちなみに私が韓国人なら例え米国の横暴な軍事費負担を飲む羽目になっても、「韓米同盟は維持すべきだ。在韓米軍もいてもらわないと困る!」と言うでしょう。

自分の安全が第一ですから。

しかし、残念ながら私は日本人です。

長距離砲の射程内に住んでいるわけでもありません。

そもそも韓国国民自身が自ら武装解除を進めている状態で、他人がもっと国防意識を持て!と言ったところで無駄です。

「ヤル気のない味方は足手まといでしかない」

米国の感覚もそんな感じでしょう。

以前は地域の安定のために韓米同盟は絶対に必要だと米国自身も言っていましたが、韓国がトップ会談で勝手にDMZの空域を進入禁止にしたあたりから、米軍の動きがかなり危険な状態になってきたように思えます。

米国側から積極的に合同軍事演習をやめ始めているように見えます。

文政権もずんずん韓米軍事関係を疎遠にしています。

戦時統制権は返還を決定し、任期中に実現すべく積極的に進めています。

軍事演習の名前も、色のない無味無感想な名前へと変更する模様です。

「乙支」という隋の大軍団を跳ね返した「乙支文徳将軍」からとったであろう、気合十分の名前が「19-2演習」へと数値化です。

19年にやった2番目の演習、という名前。

無味乾燥な事務的な名前ですね~。

どうなのよ、それ?

「韓国軍は、日常的に使用してきた「韓米連合訓練」という用語から「連合」という言葉を取り除く案も検討している」との報道もあり、韓米関係がどんどん疎遠になっています。(関連報道:『韓国軍が韓米合同演習の名称変更を検討、一部から批判の声』)

ヤバイのは米国と話し合っているという点です。

こうした名称変更は、このところの南北和解ムードが反映されたものだ。韓国軍の関係者は「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長のソウル答礼訪問や来年初めの米朝首脳会談など、各種の対話関連の日程が多い状況下、既存の韓米合同演習も変化があるべきだという認識があった」と語った。だが韓国軍内外からは、韓国政府が韓米合同演習の名称まで変えることで、北朝鮮の顔色をうかがっているのではないか、という批判も出ている。ただし国防部(省に相当)の関係者は「米軍と共にこうした案を話し合っている」と語った。

韓国軍が韓米合同演習の名称変更を検討、一部から批判の声

 

韓国側からしたら「米国も容認しているんだから大丈夫。韓米関係は揺るぎないですよ!」というつもりで「米軍と共にこうした案を話し合っている」と言っているのでしょう。

私の目には、韓国を守る気が失せてしまった米軍の本心が出ているように見えます。

やる気がないから、演習名から”連合”という言葉を取り除かれても「あーそうですか。ま、いいんじゃないっすか」で終わるわけです。

それを「米国も認めてくれた!だから韓米関係の悪化などということはない!」と好意的に見る韓国政府は、頭が腐っているとしか思えません。

世界三大戦略家の1人として名高いエドワード・ルトワック氏が、著書『日本4.0 国家戦略の新しいリアル (文春新書)』で、「もし北朝鮮との非核化交渉で進展があれば、米軍は非武装地帯の兵を減らして、ソウルの南の基地に再編するということは考えられる。そうなると在韓米軍の象徴的な意味合いは薄れ、むしろ戦闘的な能力は上がることになる。非武装地帯に配備されている米軍兵士には、本物の戦闘力は存在しない。本気で戦おうと思ったら、敵の大砲の射程内に兵士を配備するわけがないからだ」(P46-47)と述べています。

この本では「ソウルの南」とありますが、大きく南下して大邱なり釜山なりに移転することもありえます。

そして、その方が「実質的な戦闘力は上がる」わけです。

エドワード・ルトワック氏は、在韓米軍の撤退はありえないと書いています。

私も完全に撤退はありえないと思いますが、次のように希薄化する可能性はあると思います。

  1. 韓米同盟は相互防衛から、「もし韓国が侵攻されたら韓国政府の要請に従って支援し、侵略国に経済制裁を科し、国際的に非難します」という有事支援同盟に変更。
  2. 1の結果、韓国は米国に対する外交・軍事での発言権は完全喪失。つまり米国が北朝鮮に軍事侵攻するとしても、事前に連絡もなければ韓国が侵攻を拒否することも不可能。
  3. 1の支援条約の代わりに、偵察機配備やレーダー設置など情報機関的な役割の在韓米軍の駐留を認める。

このくらいには韓米同盟が希薄化しそうです。

10回目の軍事費負担交渉が決裂したら、ほぼこの方向へ進むでしょう。

いきなり破綻はないでしょうが、おそらく合意も難しく、交渉延期とその間の時間稼ぎ的な費用負担でお茶を濁しそうな気がします。

何度も何度も交渉と決裂を繰り返し、最後は在韓米軍の大幅縮小という可能性が高そうです。

個人的には、そうならないことを祈っていますが今の状況では無理そう。

もしそうなったら韓米同盟の破綻も近いでしょう。

政権交代で在韓米軍を引き留めようとしても、その時は全額負担を飲まされる可能性が大です。

日頃からこまめにメンテナンスしておけば破綻も高コスト化も防げるのに、「血盟」だとか言って甘え、韓米同盟は揺るぎないと油断し、言いたいことを言えてこそ本当の同盟関係だとナメたことを言いながらせっせと反米運動をやる。

これが何十年も続けば、同盟関係も破綻します。

おそらく米国は北朝鮮へ経済制裁は一切ゆるめず、韓国への米軍プレゼンスを放棄する形で北朝鮮への非核化を促すでしょう。

「在韓米軍も戦略兵器も撤収したぞ。お前の言う通り朝鮮半島の非核化をこちらはやり切ったんだからお前も早く非核化に向けた実質的な行動をしろ。さもなくば約束を破ったとみなして空爆するぞ」と脅せます。

韓国人の安全を売っぱらって対北朝鮮の交渉カードとする。

本来、この事態を韓国政府が防がないといけないのに、そうなるような外交を展開するんだからどうしようもない。

日本としては、韓米同盟が骨抜きになって名前だけのものになった状態を想定し、備えるべきだろうと思います。