本日、北朝鮮に韓国特使団が訪朝します。
あまり内容のない訪朝になるだろうと思ってましたが、そうでもなさそう。
トランプ大統領とも電話会談を行い、どこまでのレベルなら合意可能か調整したようです。
内容がすべて公開されたわけではないでしょうが、次のことが中央日報の記事になっていました。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政府が米朝間の非核化交渉膠着局面を打開するために「先に終戦宣言採択、後に非核化措置履行」とする仲裁案を積極的に推進することにした。5日に平壌(ピョンヤン)を訪れる北朝鮮特使団は、このような環境を整えるために北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長から核施設の申告など非核化初期措置に対する「口頭約束」を取り付けるために注力する見通しだ。
う~~~~ん。
悪くない気がする。
うまくいくかも。
3カ国か4カ国による終戦宣言を先に実施し、その後に「核施設の申告など非核化初期措置」を進める。それでOKと金正恩から”口約束”を取り付ける。それが目標だそうです。
何の期待もしてませんでしたが、もしかするとこの線で合意できるかもしれません。
そうなれば文政権の功績でしょう。
仲介役として「いい仕事しましたな!」と言えると思います。
リスクとしては、終戦宣言後に「核リスト提出?そんなこと言ってない!韓国の捏造だ!」と北朝鮮側がとぼけることでしょうか。まぁただそれをやったらもう非核化交渉は破綻ですし、韓国の対北感情は相当悪化するでしょう。すっとぼける可能性はさすがに低いと思います。
あとは付帯条件というかその他の条件交渉がどうなるかで、交渉がスムーズに進むか破綻するかが分かれてきそうです。
- 核リストの一覧に信頼性があるかどうか?信頼性の担保のために、査察を受け入れるか?
- 終戦宣言後に経済制裁が緩和されるか?
- 開城連絡事務所の開所は、終戦宣言前か後か?
- 南北連結鉄道の事前検証は、終戦宣言前か後か?
- 金剛山観光の再開は、終戦宣言前か後か?それとも非核化後か?
- 開城工業団地の再開は、終戦宣言前か後か?それとも非核化後か?
- 日付つきの非核化スケジュールが出てくるかどうか?
- 合意した非核化措置を北朝鮮が守らなかったときに、罰則規定を入れれるか?それを中国も入れて約束させられるか?
その他の付帯条件がシンプルであればあるほど、合意できる可能性は高まりますが、北朝鮮は色々つけようとしてくるでしょう。「非核化措置の口約束と終戦宣言」だけなら今回の訪朝でうまくいきそうです。
問題はその後。
当然北朝鮮は「経済制裁解除」を求めてくるでしょう。
非核化のスケジュールも長ければ長いほど北にとっては良いですから、
北「非核化まで10年かかります」
米「は?1年でやれよ!」
北「いやいや無理ですって!じゃあ5年で!」
米「う~ん、じゃあ3年で…」
なんて感じの条件交渉も始まるでしょう。
その都度、「経済制裁解除」や「在韓米軍撤退」を求めてくるのは間違いない。
そのたびに「米朝交渉は破綻か!?」ともめることでしょう。
気が遠くなりますね。
日付つきの非核化スケジュールを北朝鮮が提出し、もし約束を破ったら中国も含めて即座に完全な経済封鎖を行う、という罰則規定付きの協定が締結できるなら経済制裁の解除もありえるかもしれません。
他にも疑わしい行動や衛星写真で疑義が発生したら即査察を受け入れるとか、その手の「約束を守らせる条件」が入るなら、非核化スケジュールが数年かかるとしても、即時経済制裁解除しても良いかもしれません。
その大枠が決まれば、お金で拉致被害者を取り返せる可能性もぐっと高まります。
交渉開始の入り口を今回の訪朝でアレンジできるか?
北朝鮮担当特別代表にスティーブ・ビーガン氏という朝鮮半島の門外漢を据えて「めんどくさい条件交渉やる気ゼロ」を示してますから、米朝を仲介する韓国の役割は重くなっています。
まぁ案外、その方がうまくいくかもしれません。
失敗したら米朝双方から責められますが、今まで蓄積した対北朝鮮インテリジェンスと、何十年も続く韓米関係の蓄積をフル活用して、仲介役を果たせる実力があるとすれば韓国以外にはいません。
基本的に「金正恩を褒める」ことと「俺の言うこと聞け、さもなきゃ制裁だ」しかやらないトランプ政権が交渉をするより、韓国が必死こいて仲介する方が、物事が進む気はします。
トランプ大統領からしたら、NAFTAや中国との通商交渉、シリア情勢、NATOの防衛負担増に向けた交渉の方が重要でしょう。
北朝鮮にリソースを避けない状況を韓国がうまく埋めれれば良い役割分担だと言えるかもしれません。
まぁトランプ大統領もあまり期待してないでしょう。「特使団がすばらしい成果を上げることを心から望む」「その結果を私に知らせてほしい」という「うまくいけばラッキー感」が満載の返答ですし。
あまり期待しても失敗したときにガッカリするだけですから、期待せずに、期待して待ちましょう。