去年のロケットマン発言とは対照的だった今回のトランプ大統領の国連演説。
今回の的はイランでした。
国連の場で盛大に罵り合いを繰り広げています。
「イランの指導者は混沌と死、それに破壊の種をまいている」
凄いこと言います。「混沌と死」「破壊の種」。なかなかの暴言です(笑)
対するロウハニ大統領。
「一方的で正当性がない」「アメリカの制裁は経済的なテロだ」と反論。
経済的”テロ”と言うあたりが、中東の親イラン派を援助して、テロ活動を扇動していることへの後ろめたさがあるのかもしれません。(サウジやイスラエルも米国のバックアップ受けて似たようなことをしていますからお互い様ですが)
「ミサイルや国内の抑圧、テロなどに資金援助している」と非難し、「イランへの経済的圧力を強める」と宣言し、「すべての国にイランの孤立化に協力せよ」と呼びかける。
おかげ様でイランの経済はかなり苦境に立たされています。
本気でちゃんと経済制裁やれば、かなり効くということですね。
かつての北朝鮮を彷彿とさせます。中国企業への二次制裁も含めて徹底化したら対話の場に出てきましたから。
「強い米国にいじめられてるイランが可哀そう」という思考回路に陥る人もいますが、中東に紛争の種をまきまくっていることは確実なので、個人的にはあまり同情心は沸きません。
イエメン紛争とか起こしてますしね。自業自得でしょう。
別にどっちが悪いとか善悪をどうこう言いたいわけではなく、自分の影響力を広めるために反体制派を支援⇒政権奪取が失敗し⇒内戦化して盛大な殺し合い勃発、という状況を作り出したんだから、当然責められるし制裁受けるのも当たり前。そのリスクを分かった上で実行したんだから自業自得でしょ、という感覚です。
イランのネックはハメネイ師のような強硬派の宗教指導者が影響力を発揮して、現実的な交渉ができないことでしょうね。その点は同情します。
女性がネットにダンスしている姿をUPしただけで、四方八方から個人攻撃をし、公開謝罪にまで追い込むのがイランのイスラム強硬派です。めんどくさい社会ですよ。
制裁は無意味だという人たちもいますが、イラン国内で米国と交渉せよという声もじわりと広がっている模様です。
最初はEUが調子の良いこと言ってたので期待をしていたようですが、米国が本気で制裁をやる気だと分かったとたん、あっという間に撤退です。
ヨーロッパ企業が続々とイランから逃げ出す。
EU首脳陣の掛け声もむなしく、各企業はイラン産原油の輸入を取りやめて別の国へ変更。
イラン国民もこう発言。
「ヨーロッパには期待できません」
そうなるわな。
口だけでEU企業がどんどん撤退してるんですから。
こんなもんですよ、しょせん。
がっかりさせるくらいなら「EUはイランとの核合意を守る!」なんてかっこよいことを言わずに、韓国を見習って米国とイランの対話ムードを盛り上げるべく、仲介役に奔走するくらいのことをすれば良いのに、やってることは口だけの実態のない「EUはイランとの核合意を守ります」アピール。
まぁEU内の分裂を食い止めるのに必死で仲介役を買って出る余裕ないんでしょうね。
よく制裁は意味がないという発言を聞きますが、トランプ政権が誕生して分かったことは「今まで本気で制裁やってなかっただけ」という不都合な真実です。
本気でドル取引から締め出されたら、どんな国も企業も持ちません。
北朝鮮のような国は別だという人もいるでしょうが、それもドル取引をやっている別の国が支援しているからであって、その支援国をドル取引から締め出すぞと脅せば制裁は効きます。
これぞ基軸通貨のパワーでしょう。
通貨ってすごいわ。
制裁が強化されるに従って、だいぶ苦しくなってきたイラン経済。
追い詰めたらイラン国内の強硬派を利するだけ、という意見がありましたが、実際は「対話すべし」という穏健派の声が広がっています。
そこそこの教育水準のある国ならこういう意見が増えるのは当然です。保守強硬派のお馬鹿さんたちが権力握ったら滅びるだけですから。こいつらに任せたら俺たちの生活は地獄になる、くらいは分かります。
多くのイラン人が対話を望んでいると主張。
国益に沿った行動をとるべきだと訴える。
こういう人がイラン国内に増えれば未来は明るい。
興味深いのは米朝首脳会談後にこういう意見が増えたこと。北朝鮮にできたんだから同じことはイランもできるはず、という感じでしょうか。
当然アメリカのやり方は気にくわないが、対話と交渉をすべきだという意見。
こういう人たちがイランの大勢を占めれば未来は大きく開けます。
技術力もそこそこあるし、もともと地力はありますからグローバルマーケットに組み込まれれば中東の大国へと一気にのし上がれそうです。
そして、それを嫌がるイスラエルとサウジが徹底して邪魔をする。
この横やりを防いで対米関係を改善するには本気で非核化するしかないでしょう。北朝鮮と同じ構図です。
非核化とセットでイエメンのフーシ派支援をやめ、シリアからも革命防衛隊を撤退させる。そしてさっさと経済制裁を解除してもらい、経済発展を成し遂げて技術立国を果たせれば、核武装しなくても「いつでも核武装できる技術力と国力がある」というだけで十分抑止力になります。日本もそのパターンですね。
北朝鮮とは違って極悪な人権蹂躙をやっているわけでもないですし、サウジなんかと比べればだいぶイスラム色は薄く世俗的です。
前政権で散々苦労してまとめた合意をひっくりかえしたトランプ大統領のことは気に入らないでしょうが、ここが踏ん張りどころだと思ってもう一度交渉のテーブルに着いてほしいですね。
中東が落ち着かないといつまでたっても米国の中国シフトが進みませんし、米朝協議にも本腰が入らないですから。