トランプの米朝会談中止カードであっという間に元通り

トランプ大統領の米朝会談中止カードで、あっという間に元通りになりました。まぁ明日には180度変わってる可能性もありますが。

6/12米朝会談実施に向けて、アメリカの事務レベルの準備チームが27日、シンガポールに言ったり、板門店で事前協議したりと順調に進みだしました。さすがに今度は北朝鮮も無視はしないでしょう。

ドタキャンされた、南北閣僚級会談も6/1に実施決定。

あっという間に元通り。いやいや、大したもんです。

この調子で進むのであれば、本当に検証可能で不可逆的な非核化を成し遂げるかもしれません。

この一連の流れで国内の反応が面白い。

 

反安倍の人たちは基本的に、こういう感じ。

とにかく安倍首相をこき下ろしたいんでしょうね。

安倍総理の発言は「残念だが、トランプ大統領の判断を支持する。核・ミサイル問題と拉致問題が実質的に前進するような米朝会談となることが大事」ということ。

米朝会談中止を支持しているのではなく、トランプの判断を支持です。

安倍総理の発言内容の何が問題なのか全くわからない。

「核・ミサイル問題」や「拉致問題」の「実質的な前進」が大事なわけです。

つまり、シンガポールの事前協議をドタキャンしたり、専門家も入れない検証できない核施設爆破はまったく評価できない、数々の暴言も交渉を誠実に進める気があるとは思えない、この調子なら米朝会談中止だ、という判断を支持しているわけです。

当然でしょう。ここでピシャリと言っておかないとどこまでも増長します。

あと、個人的に存在しないとは思っていますが、北朝鮮内部の強硬派を抑える意味でも効果的です。今回の数々の暴言や不誠実な対応が、核放棄を嫌がる北朝鮮内部の軍部強硬派のせいであれば、今回の米朝会談中止カードで発言権が小さくなったでしょう。

「お前らが言うから駆け引きしたのに、まったく上手くいかなかったじゃないか!もう黙ってろ!!」と強硬派たちは大人しくなるでしょう。それでも文句を言うなら「じゃあ米国相手に勝てるのか!?」という一言で沈黙です。

中国も大人しくなるかもしれません。仮に、中朝会談で金正恩に対して「強気で行け!」という後押しをしていたのであれば、北朝鮮からしたら「習近平さん、あんたの言う通りやったのに余計追い詰められることになったじゃないか!もう黙っててください!!」となるでしょう。

米中貿易摩擦の交渉や、在韓米軍撤退、THAAD撤去にあわよくば利用しようとしたのでしょうが、これらも米国の不興を買っただけでしたね。

その結果、めでたく南シナ海で航行の自由作戦が実施されてます。(参考記事:米軍艦2隻、南シナ海で「航行の自由作戦」 中国は反発

台湾への米国の関与も加速するでしょう。

中朝の駆け引きも、トランプの一発でおじゃんです。

中国が穴を空け始めていた北朝鮮経済制裁も、かなりやりづらくなるでしょう。

めでたいことです。

すぐ引くなら最初っから大人しくしとけよ、と言いたくもなりますが、北朝鮮も自分たちの利益最大化に全力を上げて交渉するのは当然ですから、小馬鹿にするのはどうかと思います。

いつも口汚く罵ることに慣れているから、あそこまで怒りを買うとは思ってなかったのかもしれませんね。

これが正しい対応です。いつものことだと暴言をほっておくべきではありません。暴言にいちいちまともに対応するようにすれば、北の言動も変わるでしょう。

ある意味国内向けの「祖国を守るために米国をはじめとした帝国主義勢力とわが党は頑張って戦ってます!」アピールなのでしょうが、米国を名指しした批判は今後息をひそめそうです。

米国叩きの代わりに登場するが、”帝国主義者”叩き。さっそくそんな記事が登場してました。

「労働新聞」 帝国主義思想文化は侵略と支配の手段

【平壌5月27日発朝鮮中央通信】27日付の「労働新聞」は署名入りの論説で、過去、帝国主義者の反動的な思想文化が侵略の道案内であったが、現在は侵略の主役を演じていると主張した。

同紙は、こんにち、帝国主義者は世界制覇野望を実現するために手段と方法を選んでいないとし、次のように指摘した。

その中の一つがまさに、反動的な思想・文化的浸透策動である。

人々を思想的に変質、瓦解させて社会的混乱を起こせば、銃一発撃たずに自分らが目的としたことを容易く達成することができるというのが帝国主義者の打算である。

このことから、帝国主義者は久しい前から反帝・自主的な国の人民の民族自主意識を麻痺させて革命的信念を崩すのに優先的目標を定めて反動的思想・文化浸透策動にしつこく執着してきた。

帝国主義者の思想・文化的浸透において基本は、他国にブルジョア思想と資本主義生活様式を伝播させることである。

ブルジョア思想文化は人々の健全な意識を麻痺させ、彼らを思想的に堕落させて精神的不具につくる危険な思想的毒素である。

人間が精神道徳的に堕落し、変質すれば蘇生させるのが難しく、民族が堕落すれば国が衰退して必ず滅びるようになる。

同紙は、帝国主義者の反動的思想・文化浸透策動は人々の革命意識、階級意識を麻痺させて彼らを腐敗堕落させ、反帝・自主的な国々の統一団結を破壊し、内部混乱を起こして体制転覆、政権交替を実現するためのことに目的を置いていると暴いた。

また、現実は帝国主義の思想・文化的浸透を阻まないと自主性と社会主義を擁護、固守することができず、国と民族の自主的発展も成し遂げられないということを示していると強調した。―――

米国を帝国主義者と位置付けて批判することは控えていますが、「外から情報が入ってくることは嫌なんです、情報封鎖しないと体制維持できないんです、だから体制保障を約束してくれるならその点に言及するのはやめてくれ!」という必死の訴えがにじみ出てます。

人権問題でも似たような北朝鮮報道があります。意図は同じです。

収容所、連座制・密告制、情報閉鎖体制、拷問や公開銃殺などの恐怖支配、それらには触れてくれるなというメッセージです。

その点が信用できないから北朝鮮も米朝会談に尻込みしているのでしょう。

まぁそんなことは無理です。

最初は黙ってても、人道支援や経済支援が始まって軌道の乗りだしたら確実に「人権問題」に触れてくるのは間違いない。

そういう点では、経済発展を米韓日の自由主義体制の国家からの投資でやりたいとは思っていないでしょう。

あるとすれば、金大中のように現金をポンとくれるというやり方。北朝鮮は米韓日、欧州各国のグローバル企業が北朝鮮に進出することなど望んでいません。

下手に入れたら労働者保護という名目で北の人権蹂躙が崩され、円滑な経済活動という名目で情報閉鎖体制にも穴があけられる可能性が高い。

グローバル企業に勤務する北朝鮮人民が、禁制品をゲットしたり、金日成神話を否定する禁書を読んでも公開銃殺や収容所送りにはしづらい。

北朝鮮が安心して付き合えるのは、人権問題についてうるさく言ってこない中国やロシアや、発展途上の独裁国家くらいでしょう。

非核化しても、交流が増えればいつかは人権問題にぶつかります。

米国が一生懸命”体制維持の保障”を北朝鮮に持ち掛けてますが、私が北朝鮮ならまったく信じられません。

こんな報道が出てました。

米国のマイク・ポンペオ国務長官が、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」の反対給付で、「完全かつ検証可能で不可逆的な安全保証(CVIG)を提供する方案について金正恩(キム・ジョンウン)委員長と話し合った」と明らかにした。金委員長に非核化以降の体制安全に対する懸念を払拭するために「永久的非核化と安全保証」の合意を条約として議会に提出する。

ポンペオ氏「北がCVIDするならCVIG…条約で保証」

「CVIG」、新たな用語が出てきました。

「完全かつ検証可能で不可逆的な安全保証」だそうです。

こんなん絶対無理です。北朝鮮の望む体制保障と米国が提供する体制保障の内容がまず一致しない。

収容所、連座制・密告制、情報閉鎖体制、拷問や公開銃殺などの恐怖支配が北朝鮮の体制です。

米国がこれを保障するなど不可能。

独裁者打倒のために人民が蜂起したとして、米国が代わりに鎮圧してくれるわけでも、武器を提供してくれるわけでもない。むしろ「民主化勢力・自由主義勢力を応援しよう!」という名目で反体制側を支援するでしょう。

凄まじい騙しあいです。

韓国並みの発展だの、トランプの「私は北朝鮮が優れた潜在力を持っていて、いつか立派な経済および金融国家になることを心から信じている。金正恩もこの点で私に同意し、そのようになるだろう」というツイートも、いい加減にもほどがある(笑)

北朝鮮の現体制を維持した状態でそんなことが実現可能なわけがない。

「対話を拒否して戦争ムードを煽っているのは米国側だ」という国際世論を巻き起こそうと北朝鮮は狙ってるわけですから、その対抗措置として米国から北朝鮮に友好メッセージを送りまくっているんでしょう。

真面目に茶番を演じるのが外交なのかもしれませんね。

トランプの米朝会談中止カードで、またまた米国ペースに戻しましたが、まだまだ道のりは非っ常~~~~~~に遠い。これからもジェットコースターのような駆け引きが繰り返されそうです。

個人的に、核・ミサイルの廃棄だけでなく、人権問題の是正が行われない限り、制裁は継続すべきだと思っています。

先々週にソウルで脱北者や脱北者支援をしている人たちに意見を聞いたところ、文在寅の太陽政策路線を支持する人もいましたが、総じて「あともう一押し。制裁は絶対ゆるめてはいけない」という意見が大半でした。

やはり北朝鮮の人権蹂躙のひどさを肌で知る人は違いますね。

核・ミサイル破棄したところで、あの暴圧体制が維持される限り脅威はなくなりません。

北朝鮮住民に対する人権蹂躙は無視して、安易な妥協をしそうだと心配していましたが、今までの流れを見る限り結構期待できそうです。

「完全かつ検証可能で不可逆的な安全保証(CVIG)」も、善意と笑顔で毒を飲ませるようなものでしょう。

好ましい反応を続けていればトランプは褒めちぎり、気に入らなければ北朝鮮だけでなく中国含めて制裁を無慈悲に実行すると姿勢を見せる。

こういう分かりやすい対応の方が北朝鮮には効果的だという良い事例になりそうです。まぁこの方法が使えるのは米国と中国くらいですが。日本や韓国がやっても北朝鮮から「うるせぇ!ボケっ!!」と言われて終了です。

何はともあれ米国にはこの調子で頑張ってもらいたいですね。