どうしても開城工業団地を再開したいなら

開城工業団地と金剛山観光の早期再開を掲げてきた文政権。

米国から待ったがかかり、「すべては制裁が解除されてから」との前提条件を繰り返す公式声明を出す以外に韓国もやることがなくなってきました。

前のめりの韓国を米国と日本が羽交い絞めにして止めるという構図が定着してきましたね。

北朝鮮側から、韓国は制裁にこだわってばかりでなんもやろうとしねぇと文句も出てきています。

要は韓国に、北朝鮮の代わりに制裁解除をするよう米国を説得しろという命令。

きっと裏では、「平和の維持のため」「交渉を前に進めるため」とか言いながら制裁の一部解除を探っていたのでしょう。「非核化実現まで制裁維持!」という米国の強い意志を理解してあきらめたのでしょうが、本音は中露と一緒で制裁緩和だろうということは予想がつきます。

なぜそんなに開城工業団地を再開したがるのか謎ですが、ダメだダメだと杓子定規に否定するのも芸がない。

思考訓練の一環として開城工業団地再開の条件を考えてみます。

 

いきなりですが、開城は捨てる。

これが第一歩です。

開城工業団地の再開条件とか言いながらいきなりそれかい!とツッコまれそうです。

開城を閉鎖し、韓国側に工業団地を建設し、設備はそちらに移転させる。

北朝鮮労働者には通勤してもらうか、出稼ぎ労働者として住んでもらう。

以上、終了です。

この形にするのが必須条件。

そうすればもろもろの問題はだいたい解決できます。

安い人件費という強みは競争力維持のために必須ですから、最低賃金など韓国の法律が適用されないよう法整備は必要でしょう。

北朝鮮側ではなく、韓国側に北朝鮮用の経済特区を作るイメージですね。

北朝鮮側が開城に用地を準備して、北がもっとも嫌う資本主義の出先機関を作ったことに対し、北朝鮮が南北融和のために大いなる決断をしたんだと言う人もいます。

これは大嘘です。

北朝鮮からしたら国内に作る方が都合が良いです。北朝鮮国内であれば、党の統制が効くからです。

北朝鮮の保衛員や警察を送り込めない韓国側の工場に、大量の北朝鮮労働者を送り込む方が北は嫌がるでしょう。

北朝鮮側から通勤してもらえば、南北の線路をつないだり、道路を整備する意味も出てきます。今の状態で線路だけつないでも誰も使いません。需要がないところにインフラ作っても不良債権化するだけです。

韓国内に北朝鮮用の経済特区を作る方式にすれば、FTA交渉で開城工業団地がネックになって、不利な交渉を強いられることもなくなります。

韓国は、FTA交渉では体を張って「開城」を守ってきた

・・・厄介な存在である「開城工業団地」は、自由貿易協定(FTA)先進国である韓国にとって、通商交渉官を長く苦しめてきた案件でもある。

FTAで引き下げられた低い関税率の適用を受けるには、輸出する品目が「韓国製」であることを示す原産地証明書という書類が必要になる。第三国から韓国を経由して迂回輸出される品目にも低い関税率が適用されてしまうことを避ける目的だ。

ここで、韓国政府はこう主張する。

「開城工業団地で生産された製品も、ソウルや釜山で作ったものと同じく『韓国産』である」

ここで、交渉相手国は皆、まずこう回答する。

「開城は、韓国ではないのでは?」

地理的には、開城は間違いなく北朝鮮。韓国と北朝鮮の間では重要な共同事業地であったとしても、第三国からすれば、それは知ったことではない。ましてや、論点となる銘柄は「北朝鮮」。そもそも輸入関税がほとんどゼロのシンガポールを除けば、「開城工業団地も韓国」など軽々に認める国などない。

こうして、「開城工業団地」を韓国の一部と認めてもらうための交渉は、韓国が不利な状況からスタートする。

見返りとして、韓国側が大きな関税削減を約束させられたり、韓国が相手国に要求している交渉カードを取り下げさせられたり……。韓国の交渉団を大いに疲弊させて、ようやくFTA交渉の相手国からは、「いくつかの品目に限定して、開城工業団地の製品も韓国製と認める」というオファーを得ることになる。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/070600051/070900009/?P=2

今まで開城工業団地の製品は韓国製じゃないだろ?と言われて不利な条件をのまざるえなかったわけですね。

労多くして利少なし。

閉鎖に文句を言う韓国人もいますが、現場で交渉の苦労をさせられていた人たちから、すっきりしたでしょうね。足を引っ張る案件が消えたわけですから。

逆の立場の人(工業団地再開賛成派)の人の考えは次の記事でわかります。(参考記事:南北和解協力の象徴、開城工業団地の再開なるか

韓国側が得をしていた、北朝鮮側を不利な面を飲み込んで南北和解と協力のために多大な努力をしていたんだと高評価。

ミサイル開発の資金源になっていたというがそんな証拠はないと擁護。

どうしようもねぇなこの人たちは、とあきれます。

狂ってるのは、次のような主張。

韓国主導で再開を

現在、韓国の統一部は開城工団再開の条件に「非核化の進展」を挙げている。これについて金理事長は「昨年11月29日以降、約8カ月も核・ミサイル実験を凍結しているし、4月と6月には首脳会談で非核化に合意もした」と北側の譲歩を挙げた。

その上で最近の膠着(こうちゃく)状態における韓国の役割をこう力説した。

「アメリカが北朝鮮との交渉の速度を調節しようとしている中、韓国はドナルド・トランプ大統領の助力となる方策を考えるべきだ。韓国がこのまま『突破(工団の再開)』すれば、トランプ大統領は(北朝鮮との交渉に難色を示す)アメリカの議会やメディアに『韓国はあのように進めている』と説得できる。アメリカの顔色をうかがうのは(非核化の)助けにならない」

こうしたいわば「韓国主導論」を語る進歩派、特に自主派と呼ばれる専門家は多い。現在、韓国で主流となっている自主派の考えとは、南北問題は今や国際問題であるが、そもそもは民族の問題であるとした上で、「開かれた自主」の精神で国際社会において韓国がイニシアティブを発揮するべきという立場だ。今の文在寅(ムン・ジェイン)政権のブレーンの多くがこの考えを共有しており、「朝鮮半島の運転手論」に代表される韓国の北朝鮮政策の骨組みでもある。

https://imidas.jp/jijikaitai/d-40-136-18-08-g734/2

恐ろしいこと言ってます。

韓国が工業団地再開に動けば、トランプ大統領が議会を説得する助けになるそうです。

んなアホな。

トランプ大統領のリップサービスを真に受ける人がいるんですね。

あんなもんは「俺は友好的で平和を大事にしてる」アピールでしょう。

やってることは制裁の強化ですから。

対中国も対ロシアも一緒です。

会談して「対話が大事だ」と友好アピールしてますが、制裁は一切解除してないですからね。

やり方がえげつない。

もし仮に(不可能でしょうが)韓国が無理に工業団地を再開でもしようものなら、イランのように国家単位で制裁を受けるでしょう。

めでたく韓国経済は崩壊です。

韓国がイニシアチブを握って進めるべきというのは一見かっこいいですが、それは失敗の責任を取る覚悟がなければ説得力はありません。

仮に「北朝鮮が非核化をやめたり、こっそり開発していたことが分かったら、責任をとって空爆します!」と、それくらいの覚悟があれば、韓国を信じて任せようとなります。ですが、そんな覚悟はまったくなし。

責任取る気もないのに、重要な仕事を任せる人なんていません。

そんな無謀なこと(開城工業団地再開)を推し進めるより、韓国側に工業団地建設してそこに来てもらう方がまだ交渉の余地も実現の可能性もあります。

ロシアやその他地域への派遣労働では70%~90%がピンハネされるそうですが、そういったこともある程度防げます。

経済特区として、北朝鮮労働者の給与を非課税とし、北朝鮮政府側に無税でよろしく!と交渉して飲ませる。

韓国側も、企業から税金は取りませんと言えば相互主義で名分は立ちます。企業誘致にも有利に働くでしょう。

北朝鮮が後で労働者から徴収する可能性もあるでしょうが、ピンハネされた後に「北朝鮮労働党からもらう」給与と、給与をもらった後に「北朝鮮労働党から奪われる」のとではまったく違います。

前者は北朝鮮政府への忠誠と従属性を高めますが、後者は北朝鮮政府への反感を高めます。

韓国側に作って企業運営の主導権を握っていれば、対抗措置も色々できます。

給与を現金で不規則に手渡しするなんてやり方も効果的でしょう。日給か、週給か、月給か、いつ渡すかも個人ごとに決めてもらい、現金手渡し。決まった日に月給が渡されれば徴収もしやすいですが、不定期かつ個々人バラバラだと難しくなります。

それでも北朝鮮当局からお金を取られるようなことがあれば、密告してもらって外交問題化すればよいでしょう。

それくらいやれば労働者からピンハネすることはあきらめるはず。あきらめなくとも非常にやりづらくはなります。

韓国側にあれば、工業団地の設備や備品をこっそり取って転用することも難しくなります。

韓国国内の工業団地ですから韓国のテレビも自由に見てもらえます。

脱北者の家族を工団労働者にすればこっそり面会することもできます。

人事も北朝鮮が決めた人ではなく、ある程度韓国側が決めて労働者を集めるようにするのも良いでしょう。

上述したことは、すべて北朝鮮側が拒否しようとするでしょうが、そこは交渉です。

そのために制裁を強化しているわけですから。

今の文在寅政権がダメなのは、南北和解や共存共栄のために、北朝鮮側の要求を飲むことで成果を出そうとするところです。

文化交流を言うなら、「お互いのテレビ放送を解禁しましょう」とでも言って交渉すれば良いのにそんなことはしません。

大事なのは「北朝鮮から」人を出すことです。

今まではいつも「北朝鮮へ」人を送るパターンばかり。

金剛山観光もそのパターンです。

韓国側に北朝鮮労働者用の工業団地を作ることは、北朝鮮を開国させる強力な一手になりえます。

北朝鮮に外貨が流れるでしょうが、労働党へ奪われるルートをできる限り邪魔すれば、労働者の給与は北朝鮮の市場に流れて北朝鮮民衆を強くし、北朝鮮を内部から改革する力になるはずです。

DMZ付近の韓国側の土地に工業団地を作り、NIKEやAdidas、ユニクロのようなグローバル企業が進出して安い労賃を武器に、靴や服を大量生産する。

PCやスマホ組み立て工場も良いでしょう。中国に負けない価格競争力を持てるはずです。

北朝鮮側がいきなり労働者の派遣をやめたとしても、人の問題なら発展途上国の人を代わりに入れることもできます。(安い給与のせいで奴隷労働だと批判されるでしょうが)

この点は非常に大きくて、企業側からすれば事業リスクをかなり軽減できます。

北朝鮮側に作ったらこんなことはできません。

世界的なグローバル企業に進出してもらおうと思ったら、この程度の柔軟性は必須要件でしょう。

工業団地内の売店で韓国のDVDや漫画、小説や専門書、色んな製品を売るようにすれば風船で飛ばさなくても大量の情報が北朝鮮国内に流れるようになります。

38度線近辺に5,6か所そういう工業団地を作り、何万、何十万単位の北朝鮮労働者が通勤するようになれば、ほぼ完全に閉鎖されていた38度線に大穴をあけることができます。

完全な非核化の前に制裁解除をしてやれるとすれば、こういうやり方でしょう。

北朝鮮側が段階的措置を求めるなら、こちらも容認可能な段階的措置が何かを検討すべきです。

上述のような制裁解除は、非核化の前でも実施可能な提案でしょう。

とにかく「あんたそれやったら韓国が制裁違反でセカンダリーボイコット受けまっせ」というような無茶な主張はやめてほしいですね。

米国から韓国は中朝側に転んだと誤解されかねませんから。

韓国の進歩派もこういう提案をすべきでしょう。

それでこそ現実的な南北和解であり、本物の共存共栄です。