『北朝鮮脱出 地獄の政治犯収容所』 飢餓で人間性を奪う

 この本は、強制収容所から脱出した方の手記です。この強制収容所の実態を知らずに、北朝鮮は語れないでしょう。

北朝鮮脱出〈上〉地獄の政治犯収容所 (文春文庫)』 P50-52


 収容所での作業量の多さにはまいったが、それよりももっとがまんできないのはひもじさであった。私の家では十五日間が過ぎると、持ってきた食糧はみな底をついてしまい、あとは配給されるトウモロコシ米にすがるよりしかたがなかった。
 トウモロコシ米の「米」というのは言葉だけで、本当はトウモロコシを米つぶより大きめに砕いてあるだけのものである。これが一日三百五十グラムずつ配給されるのだが、長時間炊いても消化しにくいものであった。
 収容所に入ってきた十人に九人は「トウ米」のためにひどい下痢をする。六ヵ月も続けて下痢が治らず死んでいく人もいた。全部きれいに消化した人さえ栄養失調になるのに、まして消化できず、下痢が続けば死んでいくのが当然である。
 私も、ひどい下痢を起こし、もし祖母の献身的な看病がなかったなら、たぶんそのとき死んでいたと思う。
 収容所の生活は最初の一年間が一番こらえにくい。何の予備知識もなく引っ張ってこられた人たちには、その精神的打撃があまりにも大きく、とうてい耐えがたいものだ。その上、乏しい食糧と重労働。疲労の度が極限に達すると人はみな不精になる。その結果、髮の毛と衣服はノミ、シラミ、ナンキン虫の巣となってしまう。
 こんな生活が続けば、当然不潔がもたらす病いを避けることができない。収容所の人たちが多くかかる病気は、ペラグラと肺結核、胃腸病、痔疾、肝炎、凍傷、そして精神病だ。
 とりわけペラグラは一番多く、これは栄養失調からくる一種の皮膚病である(Pellagra=ビタミンB2の不足からくる皮膚病の一種。胃腸障害とアルコール中毒によって、ビタミンの吸収と同化機能が衰弱したときも起こる。皮膚には発疹ができ荒れてくると同時に赤黒くなり、爪は厚くなって折れやすくなり、胃腸障害が発展して神経障害も起こすことがある)。
 収容所で「トウ米」しか食べられない人びとにとってはこの病気は恐怖だった。この病気にかかると、乾いた疥のようなものが手からはじまって顔一面にひろがり、皮膚はカサカサとなり、皮が剥げてくる。年寄りは特に爪がそり返る症状をみせる。
 用便のあと始末をするための紙がないことが、痔疾の多い原因となっている。木の葉や、砂であと始末をするような生活は、一般社会の人の想像もおよばぬことであろう。
 食べるものがなくなると人間はがつがつして、常識では考えられない異常な食い意地が張ってくる。目に見えるもの、食べることのできそうなものは、何でもかまわず口の中に入れる病的症状である。カエル、ヘビ、木の実だけではなく、ネズミその他、なんでも手あたり次第取って食うのだ。
栄養失調が長く続くと精神分裂症状も現われる。たとえば、父が子の食事まで取って食べてから、目だけぱちくりさせて坐っているといった行動をとったりする。その目はひっきりなしに食べものだけを迫うようになる。完全に理性を失い、動物のようになってしまう。
 こんな症状が悪化するとこんどは反対に、何も口にすることができなくなり、当然の結果として死に至る。そういう状態で運よく生きのびる人もたまにはいるが、結局は廃人になるか、完全に気が狂ってしまう。
 こういう精神異常者用の隔離所があり、そこは、第一作業班の真向いに見える川の向う側の山の麓に位置していた。私たちは、その隔離収容所を「17号」と呼び、そこには三百名くらいの精神異常者が隔離されていた。
 精神病者には正常人と区別するために白い衣服を着せる。しかし、精神病者だといっても労働を免れるわけではなかった。
精神病者は命令や言葉では統制できないので、飢餓を利用し、「上飯-中飯-下飯」という制度を作り、言うことをよくきくかどうかで、その量を徹底的に調整するのである。精神病者にはこの方法が一番きき目があった。
 精神病棟の周辺には常時武装した兵隊が警備に立つ。突然発作を起こしたり、仕事を怠けたりすれば、容赦なく銃を逆さにして叩きつける。だからいったん「17号」に入れば、ほとんどがそこで死んでいくことになる。


 国家が主導して、強制収容所で、精神に異常がきたすまで飢餓に追い込みます。一部の犯罪者ではありません。国民を守るべき国家が容赦なく実行しています。

 親が子の食事まで奪うまで理性を失わせ、キョロキョロ食べるものを探すだけの、動物にまで人を貶めます。

 精神に異常をきたした人でさえも、食事制限で言うことを聞かせ、働かせます。恐るべき残虐さです。

 この人間を動物にまで貶める、拷問収容所を運営しているのが、「敬愛する将軍様」が主導する北朝鮮労働党です。朝鮮学校では、この党を素晴らしい母なる党と教え、「敬愛する将軍様」が乱舞する教科書を使っています。

 いったい、民族教育とは何でしょうか? 朝鮮民族を大虐殺する連中を愛するように教育するのが、朝鮮民族の民族教育なのでしょうか?朝鮮学校は、子供の未来を奪う、残酷な教育をしています。

 一刻も早く、この残酷な教育を是正し、北の大地で無残に殺された朝鮮同胞のために、涙し、黙とうを捧げ、冥福を祈る。そういう教育を、真の朝鮮民族のための民族教育をしてほしいと、願ってやみません。

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