朝鮮学校問題や在日の歴史を語る上で、帰国事業は避けては通れないでしょう。
『NHKスペシャル 北朝鮮帰国船~知られざる半世紀の記録~』という番組から、朝大生200人が「金日成元帥生誕60周年祝賀団」として捧げられた、当時の映像を紹介します。
元朝鮮大学校教授のパク・ヨンゴンさんが当時を回想しています。
当時生徒を説得し、社会主義建設の理想のため君たちの才能を十二分に発揮すれば、朝鮮の建設に貢献でき、君たちのためにもなる、と本気で思って説得します。
当時を振り返り、悔恨の念を吐露する番組になっています。NHKは良い仕事をしていますね。
ちなみにこの放映後、総連に追い掛け回され表舞台には一切出てこなくなりました。今ご存命なのかも謎です。
この番組ほど朝鮮総連や朝鮮学校にとって都合の悪いものはないでしょう。
違法アップロードがはびこるインターネット上で、こういう動画はまずお目にかかれないですね。なぜなら速攻で違法アップロードだ!という通知を従北さんたちがせっせと出すので、あっという間に消えます。これはぜひDVDで販売してほしいところです。
Youtubeに上げると即座に削除申請が出されるので、このサイトで公開しています。NHKから直接苦情が来れば削除しますが、まぁその時には、「なぜ現在進行形で朝鮮学校の子供が毎年平壌に強制連行されて常軌を逸したソルマジ公演をやらされるという、深刻な人権蹂躙をNHKはニュースで取り上げないのでしょう?」、と逆に質問してやりたいと思います。
これほど明白な子供に対する人権侵害はありません。
まさかこれを好きでやっているとは言わないでしょう。
やりたくないことをやらせるために平壌に連れていく。
こういうのを強制連行といいます。
もし望んでやっているから強制連行ではない!という反論がきたら、望んでやっている=本当に「敬愛する金正恩元帥様」と思っている=洗脳教育が成功している、となります。
そちらの方がもっともっと問題でしょう。
いつ崩壊してもおかしくない国に長期滞在させて命を危険にさらし、朝鮮学校建設に尽力した在日一世や、他でもない朝鮮学校卒業生を収容所で虐殺したのが敬愛する将軍様なわけです。
他でもない朝鮮学校の生徒にこんな公演をやらせるなど、ありえない人権蹂躙です。
朝大生200人がバイクで隊列を組んで金日成の前にあらわれ、祝賀文と贈り物を捧げる。こんな姿を収容所で虐殺された数万人の帰国在日たちが見たら、本当に愕然とすると思います。ウリハッキョは狂ってしまったのか!と激怒するはずです。
「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」の機関誌である『光射せ!7号』に、当時、生徒に対して帰国を熱心に説得し、この朝大生200人のバイク部隊に加担してしまった、元教員の悔恨の念に満ちた文章があるので一部紹介します。
思い出すだけでも嘔吐をもよおす。ひょっとすると時計が五~六百年も逆回りしたのではなかろうかと思われる。私たちの住むこの時代に起こったとはとうていおもわれないでき事である。
古代日本国(倭)が、後漢の安帝に送った奴隷(生口)、中世の高麗や朝鮮王国が元や明国に朝貢品として贈った女性・「貢女」のように、総連は「生の人間」を金日成に献上した。これはまぎれもない事実である。
もう四十年も前のことだが、私はいまだ、この胸のつかえを抑えることができないでいる。
一九七二年四月二十六日、新潟から出発した「金日成元帥誕生六〇周年祝賀団」はピョンヤンに到着。例のように競技場には多くの幹部たちが集められ、ブラスバンドは「金日成将軍の歌」が繰り返し演奏されていた。
二〇〇人の優秀な朝大生は、隊列を組み金日成の前に勢ぞろいし、団長は仰々しく総連からの祝賀伝達文と贈り物を献上した。
いや、ほんとうは彼ら彼女ら自体が、還暦の食卓に捧げられた「生の朝貢品」であった。
(中略)
そして、一九七一年・金日成元帥の還暦を一年後に迎えるころになると、大学はもちろんのこと、総連の各級機関や学校、地域単位での、金日成に対する忠誠の贈り物・キャンペーンが繰り広げられた。それは、莫大なカンパを募って準備した、工作機械、電子計算機、製造機器等であり、趣向をこらした記念品や装飾品であった。その量は「帰国船」一~二艘では積みきれなかったという。
給料からいくら天引きされたかも忘れてしまったが、大学の教職員は仕込まれた討論が続いた後、「真心を込めての忠誠金」を捧げたものだ。そしてそれは、なんの負担にもならなかったばかりか、胸に込み上げる熱いものを抑え切れない心境であった。教祖さまにひざまずき無上の幸せに震える信徒のように……。
『光射せ!7号』 P161-162
これがカルト教育の恐ろしさでしょう。
喜んで金を出し、同胞を無慈悲に公開銃殺する相手に忠誠を捧げていたわけです。
こんなものは昔の話しだ、という反論はあるでしょうが、今も元気に忠誠の公演をやっているこの人たちを見て、過去のことだと言える人はいないはずです。
あふれんばかりの忠誠心ですね。祖国は将軍様のものであって朝鮮人のものではないそうです。総連も将軍様のものであって、在日同胞の団体ではないと宣言してます。近衛隊になって生きていくそうです。こんなありえない団体を取り締まらないことこそが、日本政府による在日差別だと言えるでしょう。
日本のデイリーNKといい、テレビによく出る北朝鮮専門家はこの人たちのことを徹底して隠蔽しようとします。
モランボン楽団の前に、在日朝鮮人芸術団(金剛山歌劇団)が毎年何回も平壌に行って、忠誠を誓う公演をしていたり、ミサイル発射を祝福していたりするわけです。
知っているくせに、なぜかこの無視できない件をメディアで話そうとしない。本当にありえません。
朝鮮総連に昔のような力はない、というのも鉄板の情報操作ですね。
北朝鮮専門家がこういうツイートをしている時点で、北朝鮮を非難しているようで実は朝鮮総連組織を守っていることを証明しています。
朝鮮総連の中央幹部全員が揃っても藤本健二氏、デニス・ロッドマンには適わない。総連、金正恩からどんだけ信用されてへんねん。藤本健二議長、デニス・ロッドマン副議長にした方が、間違いなく総連と北朝鮮の風通しはよくなる。その代わり組織体としては無茶苦茶なるだろうが…
— 高英起(コウ・ヨンギ)YouTubeチャンネル開設! (@dailynkjapan) April 26, 2016
こういうことを言って警戒させないようにするわけです。
藤本健二氏やデニス・ロッドマンに、朝鮮学校の子供を毎年平壌に強制連行して常軌を逸したソルマジ公演をやらせることができるのでしょうか?ありえない主張です。
在日二世である高政美代表が朝鮮学校の件で頑張っているのに、なぜこの人は無視するのだろうと疑問でした。
やり方が違うだけで、北朝鮮を良くしたい、朝鮮学校を良くしたい、という気持ちはあると思っていたのですが、さすがに昨今の朝鮮学校に対する態度を見る限り、北朝鮮労働党の望む通りの行動をしている従北人士としか思えません。
ソルマジ公演を見て激怒しないものに、在日を名乗る資格も、朝高ラグビーを誇りに思う資格もないでしょう。
本当に在日コリアンだと胸を張れるのは、NHKに出て実情を話したパク・ヨンゴンさんや『光射せ!』に寄稿して自分の罪と正面から向き合っている人たちでしょう。
まぁこのようにチクチクつついてはいますが、それほど悪感情を持っているわけでありません。北朝鮮から情報を取るには、ある程度おもねらないと無理なのだと思います。まぁだからと言ってつつくことをやめる気はないですが。
中国を見れば分かるでしょう。よく大学の教授やメディアが、自己検閲を強いられる、というようなことを色んな本で目にします。
常識的に考えて、北朝鮮など中国より100倍閉鎖的なわけです。中国以上に自己検閲が強いられると思った方が無難でしょう。
次に、説得された生徒がどういう反応をしたか紹介します。
私の仕事はそれだけではなかった。ある日の午後、セレクトされた(信じられる)教員たちが、教務棟の会議室に集められた。還暦を祝う学生祝賀団の候補にあがった学生を説得して送り出せ。その名誉ある担当者としての任務を遂行せよというものであった。もちろん私はなんの疑いもなく担当者に選ばれたことに対する誇りすら感じ、懸命に任務にあたった。
対象者として自分の学部の学生が割り当てられた。数名の学生はほんとうにすんなりと説得に応じてくれた。なかには「先生、ありがとうございます。自己の任務をまっとうします」と顔を紅潮させて誓う学生もいた。
『光射せ!7号』 P162
まさにソルマジ公演に動員される子供たちの姿だと言えます。
脱北者いわく、「まじめに社会主義の理想を実現しようとした赤い人ほど真っ先に殺された」ということです。賄賂とか平気でやれる、不真面目な人は生き残るそうです。
こういう顔を紅潮させて「自己の任務をまっとうします!」と言った子供たちはあっという間に粛清されたでしょう。
もしくは人質としていいように使われます。
現在進行形で行われているソルマジ公演は片道切符じゃないだけ人道的ですが、やっていることは変わりません。向こうで親族にあってつながりができたり、友人ができたらおしまいです。
なにせ相手はいつでもその親族や友人を殺せます。人としてのまともな情があればあるほど、北朝鮮の言うことを聞くしかありません。(※詳しくは『今も続く北朝鮮労働党による在日への人質ビジネス』)
万景峰号の往来が止まったため、人質ビジネスが終わったという誤った認識を持っている方がいますがとんでもないあやまりです。今も人質ビジネスは続いています。
よく洗脳教育などやっていないという主張をされる人がいますが、朝鮮学校の子供がどう考えているかを知れば、洗脳教育が成功していることが分かるでしょう。
僕は、朝鮮に訪問した際、祖父の弟にあたる人とその一家に会いました。スケジュールの合間をぬって何度か一緒に食事をしたり、一人では食べきれないほどのお弁当を作ってきてくれたり、僕の事をアボジ(父)とそっくりだと、二コニコ笑いながら色々な話をしました。その方は僕に『あっちで大変なことが無いか』『あっちの政府はまだ在日に弾圧を続けているのか?』『つらいと思うが踏ん張って支え合って生きていけ』と自分の生活より異国の地で暮らしている在日を心配して励ましてくれました。日本の僕たちのことも見守ってくれていて、こういう人たちに支えられて頑張れるんだと感じました。
『抗路』 P99
弾圧を受けて虐殺された、朝鮮学校を作った在日一世である帰国同胞や、北へ渡った朝鮮学校の卒業生のことを思えば、「日本で弾圧を受けて大変だろう?」と心配されて感動する姿は、あまりにも憐れです。
次は、説得に成功した生徒の末路と、自分の苦しみについて辛い心情を吐露している部分を紹介します。
本人はイエスだが、家庭の事情で決まらない学生が多かった。その事情はいろいろであった。父母を大学にまで呼び出し説得しても空回りし断念した学生もいた。
ある地方からの学生で、日本の高校から進学してきた学業優秀なB君は、父親がガンとして首を縦に振らなかった。父は数店のパチンコ店を営んでいた。
(中略)
最初は、この子が店を継がなくてはならないから駄目だの一点張りだった。しかしもう一つの難関があった。B君の叔父が二人いて一人は韓国に、そしてもう一人が民団の現職幹部で、徹底的に反対していると言うことであった。
(中略)
私とB君との「談話」は、もう根気比べ、体力比べの域に達していた。とうとうB君は夜も更けるころ、「親との縁を切ってでも」といい説得に応じた。
彼は家に戻り両親を前にして「店は弟に継がしてくれ、勘当されても北で勉強したい」と譲らなかった。十日ほどして、彼は晴れた顔で大学に戻ってきた。そして、父母兄弟に送られて新潟を後にしていった。
(中略)
ほんとうに罪なことをしてしまったと思う。どうしても教え子たちには逢えなかった。そんな資格もなかった。
何を隠そう。私の北に渡った父母はもちろん兄二人と姉、弟までも今は帰らぬ人となり、多くの友も北の地で死んでいった。だが、それにもまして、「地上の楽園」を吹聴して「帰国」させ、「祝賀団」にくい込ませた教え子たち、なかには政治犯収容所の露として消えていった学生たちを思うと胸が痛い。
B君は、その後地方の幹部にはなったが、若くして患い、「先立つ不孝を許してください」との一言をのこして他界した。
私は彼から一通の手紙も、伝言も受けていない。かれの心情を今では痛いほどに理解できる。彼が帰って五年も過ぎたころ、東京での大きな大衆集会で偶然にも、B君の父親にあった。私は「ピョンヤンからは便りがありますか」と訊ねては見たが、アボジの目を直視することはできなかった。
恨みのこもった鋭いアボジの眼差しを感じないではいられなかった。
『光射せ!7号』 P162-164
恨みのこもった鋭いアボジ(父)の目を見れない。
この方々の心情を思うと胸が痛みます。
それ以上に北朝鮮へ帰った朝大生200人の運命を思うとなぜこんなことが起きてしまったのか、、、と深く考えざるを得ません。
そして、この暴挙がソルマジ公演や、祖国訪問という形でやり方を変えて続いています。
本来であれば、朝鮮学校の支援者や、朝高ラグビーの伝統が続いてほしいと願っている人たちこそが、朝鮮学校の子供につけられた北朝鮮の鎖を断ち切ろうと尽力しなければいけないはずです。
それなのに、逆の行動をしてしまう。それも善意で。
帰国事業が善意の元に進められ、結果、地獄へ送った悲劇になってしまったことから何も学んでいないとしか思えません。
金と命を強奪され、この上子供たちの未来まで奪われてたまるか!
朝鮮学校は「将軍様の学校」ではない!
在日同胞のウリハッキョ(我が学校)だ!!
返せ!返せ!!返せ!!!
これが北朝鮮の収容所で殺された数万人の在日一世やその子孫たちの声でしょう。朝鮮学校の存続を願う人たちはそのことに気づいてほしいと思います。
明日は、朝大生200人の生贄を捧げた後の、「教員訪問団」について書きます。ぜひチェックしてください。
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