『北朝鮮強制収容所に生まれて』に見る北朝鮮のダメージコントロール

生きて出られないと言われる北朝鮮の政治犯収容所から奇跡的に脱出し、その後脱北に成功した申東赫(シン・ドンヒョク)氏。彼の証言をもとに映画が作られています。

この映画を作った人たちは善意で製作したのでしょうが、おそらく周辺に従北左翼の皆さんがいたのでしょう。北の残虐さを矮小化したり、問題をすり替えたりする内容が含まれていました。

この辺の少しでもダメージを減らすとする情報操作は天下一品です。

その内容はこれ。

 

まず一つ目。

映画の中にも出てくる、北朝鮮から流出したらしい警察尋問の様子。

はっきり言って、実際に拷問を受けた脱北者が見たら鼻で笑うレベルです。

こんな映像で、北朝鮮の政治犯収容所の残虐さは伝わりません。

紹介するならするで問題ないのですが、「政治犯収容所の拷問は、この100億倍は残虐」と明確に伝えておかないと、政治犯収容所の拷問がこのレベルと勘違いしてしまいます。

つまり、北の政治犯収容所の実態を矮小化されている。

とある脱北者が言っただけで裏取りができていないのでなんとも言えませんが、日本の北朝鮮専門家ストーンボール氏が、「こんな映像ゲットしましたー!」と持ち込んだとのこと。

「おぉ!素晴らしい!!」と映画の中で使ったのでしょうが、北朝鮮からしたら「まんまと引っかかりやがった」といった感じでしょう。

政治犯収容所の実態はこれです。伝わるようにホロコースト関連映像と並べてみました。

これが実態です。

棒で女性をちょろっと殴る程度の映像で、政治犯収容所の拷問の実態など一切伝わりません。

再出しますが、こんな程度なら一昔前の釘バット振り回していた日本のヤンキーの方が恐ろしいです。

さらに怪しいのは、棒で殴った瞬間にきれいに棒が折れている点。

キレイに折れたおかげで頭から血も出ません。

まぁ、北朝鮮が意図的に流出させた映像だろうな~という印象です。

この辺のダメージコントロールは大したものですね。

そして、映画『北朝鮮強制収容所に生まれて』のもっともありえないところは、最後のシン・ドンヒョクの独白です。

  • 収容所にいたころは常に空腹で暴力をふるわれ罰せられる日々でした
  • でも私にとってはお金がすべての韓国生活がむしろつらく感じられます
  • 確かに収容所の人たちはつらい暮らしをしています
  • ただ、一生を収容所の中で終えるとしても自殺する人はあまりいません
  • 一方韓国は服も食べ物も豊富で何不自由なく見えますが自殺する人は収容所より多い
  • 毎日のように自殺者のニュースが流れます
  • 世を恨んでいる

いやいやいや、凄いのをラストに持ってきています。

シン・ドンヒョク氏が北の手先なんてことはないでしょうが、仮に「よ~く思い出してください。強制収容所にまた入れられたいですか?」と聞けば、「いや、それはないです」と答えるでしょう。

ありえないのは、このセリフを引き出し、最後に持ってくる制作サイドです。

だいたい、強制収容所で自殺者がいないのは、自殺すると連座制で一緒にぶち込まれている家族に被害が及ぶからです。

「自殺する自由」さえないのが、北朝鮮の政治犯収容所です。

収容所で生まれ、収容所で育ったから、まったく違う世界に適応するのに苦労しているだけでしょう。その愚痴程度のことを取り上げるのはどういうつもりか?と製作サイドに聞きたいものです。

韓国の自殺者を問題視していますが、北朝鮮のように「首領様の許可なく自殺したら、あなたの家族を北朝鮮の強制収容所に送ります」と言えば韓国の自殺者などあっという間になくなります。

人間誰しも自分の過去を美化したいものです。韓国での生活がうまくいかず、多少文句を言うこともあるでしょう。そういう人間の弱さにつけこんで、こういうセリフを引き出し、ラストにもってくる。こりゃ北シンパが入り込んでるな~と思わされます。

そしてこの「収容所に自殺者はいない」「韓国では毎日自殺者が出ている」という独白の後に出てくる映像も凄まじい。

  • 北朝鮮の暮らしで懐かしいものはありますか?
  • 純粋だったこと
  • 韓国ではお金に支配されお金がないと何もできません
  • 収容所ではお金の心配がなかった
  • 収容所で特に懐かしいことはありませんが
  • 心だけは純粋でした

なんか資本主義批判が入ってきてますね。

心だけは純粋かもしれませんが、密告しないと生き残れない収容所で、純粋もくそもないでしょう。

シン・ドンヒョク氏は、素行の良い囚人の男女を選び「褒賞結婚」によって生まれた子供です。

人間を家畜のごとく扱う北朝鮮は本当に信じがたい。

シン・ドンヒョク氏は、収容所で生まれ、収容所で育ち、「愛」という概念を持たずに生きることを強いられた人です。

この人を責める気はまったくないですが、かなり特殊な生い立ちで、収容所の中が世界のすべてだったわけです。

別世界から移ってきたのですから、適応するのもそりゃ苦労するでしょう。なんでも金、金、金、金で、ずーっと金の心配しながら生きていくのに嫌気がさすのも分からんではない。

人間誰しも自分の過去を全否定はしたくないもの。そういう弱さにつけこんで、こういう証言を引き出す制作サイドの意図を疑ってしまいます。

残念ながら、『北朝鮮強制収容所に生まれて [DVD]』では、北の収容所の残虐さは伝わりません。

本当に北の政治犯収容所の実態を映像で伝えたいなら、超リアルなアニメを作り、それを政治犯収容所に入っていた人たちに見せ、その人たちが過去を思い出してしばらく悪夢にうなされるくらいのものを作るしかないでしょう。

そのくらい残虐なことをやっているのが北の暴君です。

北朝鮮の収容所についてこのDVDを勧めるのであれば、「映像はかなり矮小化されているから、この100倍は残虐なことが繰り広げられていると思ってください」、というべきでしょう。

それにしても、己のマイナスポイントを矮小化してマイナス100万をマイナス100くらいにコントロールする手腕は大したものです。

逆に、韓国や日本のマイナス3くらいのことマイナス100くらいに拡大扇動する手腕もかなりうまい。

朴槿恵弾劾なんてその最たるもの。

宣伝扇動が北朝鮮の最大の武器だと言えます。