拉致被害者が帰ってくる可能性が高まっています。
理由は、トランプ大頭領も、文在寅大統領も金正恩との会談で日本人拉致問題を取り上げるから。
これは、米韓が圧力をかけてくれるからそうなるというのではなく、すせに水面下で北朝鮮に打診して合意を得ている可能性が高いからです。
ポンペオCIA長官(現国務長官)といった米国高官が裏で何度も訪朝しているわけです。文在寅政権も北朝鮮とは接触が増えています。
日本人拉致被害者の返還という、成功するかどうか分からない米韓にとっては他人事である交渉を、あんなにあっさり確約したわけです。
おそらく北朝鮮から日本人拉致被害者を帰す意向が米韓に伝えられているのでしょう。
もちろん日本がうるさいから米韓が「言及することだけ」を約束しただけかもしれません。その可能性もあります。その場合、北朝鮮は「もうみんな帰した。他は死去した」という返事で徹底無視するかもしれません。
北朝鮮からしたらもはや日本など基本どうでも良い存在です。
日本から金を引っ張れるわけでも、日朝貿易を活発化して経済発展につなげれるわけでもない。日朝国交正常化したところで、日本から多額の投資が舞い込んでくるかは怪しい。少なくともあの暴圧体制が変革されない限り、日本企業は進出しないでしょう。
強いて言えば、北朝鮮にとっての日本は、米国や国際社会に影響力を行使して経済制裁を強化するというデメリットを与えてくるうっとおしい存在ではあります。
それも中国の気持ち一つで消え去るものでしかありません。しょせん従属変数です。
支持率低下に悩む安倍自民。拉致被害者を奪還できれば支持率は回復するでしょう。
しかし、その場合は特定失踪者など含め、確証をもって全員奪還したと言える状況にはなりません。
横田めぐみさんが生きていれば帰ってきて、涙涙の再会劇で支持率アップ。死んでいれば遺骨を返還して、横田夫妻と同じ墓に入れるようにある。他にも生きている人が数人は帰ってきそうです。
日本の世論は盛り上がるでしょうが、疑惑の域を出ない特定失踪者、帰還事業で北送された在日朝鮮人、脱北者の家族、そして北朝鮮住民は見捨てられます。
悲しいかなこれが現実です。
北朝鮮は、米国、韓国、日本、それぞれの国内事情をよく分かっています。
韓国は統一地方選挙、米国は中間選挙、日本は安倍総理の自民総裁三選。
北朝鮮は、選挙のある国の弱点をよくわかっています。この三国に北朝鮮がそれぞれ支持率UPというプレゼントをあげる可能性が高そうです。
得られるものは、制裁解除。
「検証可能な形で核廃棄するまで制裁解除するわけがない」という声が聞こえてきそうです。
名目的にはその通りでしょうが、実質的には制裁は緩められます。
つまり、中国が強化していた制裁がガバガバになって、中朝貿易が復活します。
すでに中朝会談以降、その兆しは見えています。
世界中から北朝鮮労働者を送還する流れになっていたのに、労働者を受け入れています。
中国に入り込んで非合法活動(脱北者の取り締まりなど)をしていた、北朝鮮の要員が牢屋から出されて北へ帰されています。
ものすごい勢いで中朝関係が改善しています。
制裁も中国のやるやる詐欺で、骨抜きになるでしょう。オバマ時代に逆戻りです。
そして、「日米韓はちゃんと制裁を続けている」というポーズは維持されます。
つまり中国による実質的な制裁解除が行われ、米韓日の名目的な制裁は維持される。
日米韓は「中国が制裁を骨抜きにしている!」と文句を言って言い訳できますし、中国は「南北会談、米朝会談もやり、拉致被害者も帰ってきただろう。緊張緩和と平和のためにお前らが譲歩すべきだ!」と北を庇うでしょう。
数年前に戻りますね。元の木阿弥です。
仮に、核は”凍結”で、ICBMと短・長距離ミサイルが破棄され、北に抑留されている米国人と日本人拉致被害者が帰ってきたら、米国と日本は北への興味を急速に失う可能性が高い。
「核はうちらに届かないし、自国民は帰ってきたし、まぁいっか」となること間違いなし。差し当たってICBMや短・中距離ミサイルという脅威はなくなったので、核は継続交渉でお茶を濁す。
決して核保有を認めたわけでも、核廃棄をあきらめたわけでもない。だからこそ継続交渉をしている。とりあえず戦争回避と東アジアの安定は維持されているんだから喜ばしいじゃないか!
こうなりそうです。
本来は長距離砲群の射程内にある韓国が必死で日米の意識をつなぎとめておかないといけないのですが、なぜかこの事態に喜びそうなのが韓国の文在寅政権。
中国に負けるなと北へせっせとお金を運びそうです。
貿易という形ですから韓国企業も儲けるでしょうが、開城公団の時と同じように大量の外貨が北に流れることは間違いない。
北の統制を崩さないよう管理された経済特区でのみ経済活動が許され、金正恩に忠誠を誓うエリートたちだけがお金を儲けることができるでしょう。
そして無視されるのは、北朝鮮の人権問題と閉鎖性。めでたく北の朝鮮人奴隷支配体制はより強固になります。
収容所は維持され、連座制も密告制もなくならず、公開銃殺による恐怖支配も継続し、中国にいる脱北者は送還され、そこそこ経済状況が良くなったことに満足して、言論と移動の自由のない”昔に比べてマイルドになった奴隷状態”が維持されそうです。
米韓日は、北の人民を独裁者に売って己の選挙に役立てるのでしょう。これが国民国家の限界なのかもしれません。自国民を優先するのが国家のトップの使命ですから。
ミサイルの射程から外れて、自国民が帰ってきたら国民の安全を守るという使命は達成したことになってしまいます。
ここまで来たら、中国の貿易再開を非難はしても、米国がセカンダリーボイコットを含めた強力な制裁をするとは思えない。
これを阻止するためには、いかに北朝鮮人民のことを我がことのように同情して、その問題解決に力を尽くそうと思う世論を喚起できるかに掛かっていますが、かなり悲観的です。
なにせ同族の韓国でさえ、もはや他国のことと冷淡なわけです。ましてや日本人や米国人では期待もできない。
むしろ北朝鮮が核廃棄交渉を断固拒否して、ミサイルでもぶっ放してくれた方が、北朝鮮の体制変革にはプラスでしょう。そうなれば中国も金正恩とは対話も交渉も不可能と覚悟を決めて、米中による金正恩の除去が現実味を帯びますから。
まぁ今の国際状況を見る限り、その可能性は低そうです。
核廃棄も米国が一歩も引かなければ、北朝鮮は本当に破棄するかもしれません。その代わり北朝鮮国内の人権問題に沈黙することと、数年かけての在韓米軍の縮小・撤退をくらいは代わりに得ようとするでしょう。
こうなると北朝鮮の人権問題は、「経済発展によって解決する」という主張で封殺されるでしょう。
めでたく北の朝鮮人奴隷支配体制は維持されます。
拉致被害者の奪還と、米韓日三カ国の対北朝鮮外交の成功は、北朝鮮人民の自由を独裁者に売り渡すことで成し遂げられることになりそうです。