真珠湾攻撃をアメリカは事前に知っていたというのはデマ

日本による真珠湾攻撃。米国はこれを事前に知っていたが、参戦のためにダンマリを決め込み、ハワイの米軍を犠牲にした、という話しが保守界隈でまことしやかに語られています。

残念ながら、これはデマです。こういうことが「真実が明らかになった!」と拡散されてそれが真実であるかのように信じられてしまう。困ったものです。

特にやっかいなのはアメリカ人であるケント・ギルバード氏のような人がこの説を断言してしまっていることです。

 

ケント アメリカ人だって、本当は戦争なんてしたくありません。だからルーズベルト大統領は、自分の思い通りに政権を運営することができていなかった。そこで彼は、参戦するために日本から攻撃を仕掛けてもらおうと考えました。そのような状況になれば、アメリカが参戦する大きな理由になるし、アメリカ国民も納得するからです。

彼は綿密な計画を立てました。計画については米公文書を読めばわかります。まずは、アメリカと戦争をするしかない状況に日本を追い込む、そのような計画だった。そしてアメリカの目論見通り、日本は開戦に踏み切りました。

日本はアメリカを攻撃するため、まずは戦艦を択捉島へ移動させ、それから北太平洋を渡って、結局ハワイを攻撃しました。奇襲攻撃とされていますが、実はアメリカは日本の無線を傍受して、暗号を解読し、すべて認識していたのです。どの周波数を使っているかによって、戦艦との距離を測ることもできました。

アメリカには無線を傍受する施設が十数力所あり、日本の情報はすべて筒抜けでした。つまり、アメリカはハワイが攻撃されることを知っていた。ところが、アメリカ本国からハワイの司令官には何も知らせませんでした。戦争を始めるため、ハワイの軍隊を犠牲にしたというわけです。

その証拠に、真珠湾攻撃のときに停泊していたアメリカの船は、ほとんど竣工から二七年以上経った古い船しかなく、攻撃を受けて沈められてもかまわなかった。つまり、日本からの攻撃を待っていたのです。実に非人道的な行動だったと思いますよ。

危険な沖縄 親日米国人のホンネ警告』 P230-231

これはデマ。無線は傍受してましたが、解読できたのは真珠湾攻撃の後です。

こういう説に保守派が「そうだったのか!よくぞ言ってくれた!」「新たな史料が出てきた!これが歴史の真実だ!!」と大喜びして飛びついてしまいます。

やってることは右も左も変わらないですね。

韓国で新たな慰安婦史料が出てきた!と騒ぐのとあまり変わらないでしょう。

まぁ確かに本当だったら驚愕の真実なので大騒ぎするのは当然かもしれませんが、残念ながらデマなんですからさっさと訂正してほしいところですが、そんな人はほぼ皆無。

せいぜいデマだったと気づいて黙るくらいでしょうか?

ちなみにデマであることは秦郁彦先生の『陰謀史観 (新潮新書)』でも指摘されています。

真珠湾攻撃の直後からアメリカは数回にわたり調査委員会を設け、奇襲され大損害を受けた責任の所在を徹底的に追及した。

早々に現地司令官のキンメル提督とショート将軍が「職務怠慢」の責任を負って退役したことに対し、大統領や陸海軍中央部も一部の責任を負うべきだという異論はあったが採用されなかった。戦争終結後もキンメルらの名誉回復をはかる運動はつづき、半世紀後の二〇〇〇年に議会決議は通ったが、クリントン大統領が署名を拒んだため流れてまう。

代表的な真珠湾陰謀本は表2にかかげたが、戦争終結から十数年の第一期に続出し顔触れを眺めるとキンメルや部下だったシオボールドのような名誉回復を願う軍人、ビアードやフィッシュのように反民主党で知られる論客が目につく。

内容は同工異曲で、奇襲された責任の一部ないし大部はワシントン、なかでもトップの大統領が負うべきだという論点は共通していた。とくに戦時中は秘匿されていたが、東京と日本の駐米大使問の暗号通信を解読した「マジック」情報を大統領や陸海軍長官ら数人に回覧させていた事実が明らかにされると、真珠湾攻撃の意図を予知しえたはずだという思いこみが生れた。

実はアメリカの暗号専門家たちが読めたのは日本外務省の外交暗号であり、海軍暗号が解けるようになったのは一九四二年春頃以降だった。しかも日本海軍は真珠湾攻撃の計画が洩れぬよう重要文書は伝書使で運び、千島列島のヒトカップ湾から真珠湾へ向い出撃した南雲機動部隊には厳重な無電封止を命じ、電信員が誤まってキイに触れぬよう封印しておくほど注意を払っていた。

それでもキンメルが手持ちの哨戒機八十二機でハワイ周辺の哨戒飛行を実施していれば、奇襲前日に発見して返り撃ちにするのが可能だったのに、それを怠った。四一年十二月七日(米国時間は六日)の土曜日も艦隊乗員の半数が週末の休養に上陸して無警戒のまま翌朝、日本艦載機の奇襲攻撃を迎えたのである。

ワシントンもハワイも、予想していた日本の武力発動はタイ、マレー半島あるいはフィリピンに向かうだろうと判断していたとはいえ、ハワイの司令官が周辺の警戒を怠らなければ惨事は起きなかったことは明白である。こうした事情が判明するにつれ、論争は下火になっていく。

陰謀史観 (新潮新書)』 P178-179

暗号解読できていたのは外交暗号であり、海軍暗号は解読できていなかった。真珠湾攻撃は海軍は極秘に進めており、米国側は知らなかった。

これが歴史の真実ですね。

外交暗号を解読して政府内で回覧していたから知っていたはずだ!という勘違いからルーズベルト陰謀説が生まれたわけですが、徹底調査の結果現地司令官の怠慢ということで話は落ち着きます。

それが気に入らないキンメルや部下だったシオボールドのような名誉回復を願う軍人、反民主党で鳴らした共和党側の人間が一生懸命ルーズベルト陰謀説を創作したわけですね。

良くあるパターンです。

この辺の真珠湾陰謀説は米国で一度ブームになってますが、米国では論破され尽くして下火に。

今度は日本の保守言論人が「新たな史実が明らかなになった!」と一儲けしようとしてます。

真珠湾陰謀説を読んだときは、「え?そうだったの!?」と驚きましたが、秦郁彦先生の『陰謀史観 (新潮新書)』で論破されているのを見て右も左も嘘つきばっかりだな~と呆れました。

ちゃんとした通説にもとづいた歴史書は退屈で売れませんからね。こういうセンセーショナルな方が残念ながら売れてしまいます。

しょうがないと言えばしょうがないですが、嘘が明白になったらちゃんと訂正してほしいものです。

左翼批判も大いに結構ですが、間違いを認めて謝罪して訂正しろ!という批判は、保守側にも成り立つということを自覚してほしいと思います。

右も左も嘘ばっかりですよ、ほんと。