帰国事業について語る『週刊金曜日 2011/3/11』

週刊金曜日 2011年 3/11号 [雑誌]』で、「在日朝鮮人「帰国事業」とは何だったのか 増える脱北帰国者と向き合う日本社会に」というタイトルで、脱北者の李相峯さん、ジャーナリストの石丸次郎さん、人材コンサルタント 辛淑玉さんの座談会があります。

特に問題があるわけではなく、良い内容です。辛淑玉さんや石丸次郎さんへの不満は、現在進行形で朝鮮学校の子供の未来が強奪されていることを止めようとしないところですね。

それ以外は、最近増えている愛国馬鹿よりよほど好感が持てます。

帰国事業の歴史問題に真正面から向き合うことで生じる問題には、「そうなんですよ!」と同意できる内容が多々ありました。

 

みんなが背中を押した

石丸 帰国事業の問題は、私から見ると在日社会の中でも驚くほど目が背けられていると感じます。

辛 それは、北にまだ親族がいるからですよ。だって九万三〇〇〇人というと、在日のほぼ五、六人に一人が帰っているわけでしょ? 私はたまたまみんな死んじゃったから声を出しているけど、普通はどんなことがあっても口に出せない。たとえ北に親族がいなくても声を上げるのは恐い。特に「朝鮮人であることそれ自体が罪」という空気すら漂っているここ数年の日本社会の中ではね。私だって心理的ハードルはかなり高いもの。

石丸 帰国者問題を日本で扱うということは、中心になって事業を進めたのは誰で、送り出した後も北朝鮮を「地上の楽園」と宣伝し続けたのは誰かという問題に向き合わざるを得ないからではないか? 総聯はほんの数年前まで、帰国事業のおかげで多くの同胞が祖国で幸せに暮らせていると言っていました。最近でも四〇周年、五〇周年の記念式典をやっています。だから「帰国事業は間違っていた」と言うことは真正面から総聯批判をやることになる。それを在日自身が日本社会で言うと、投げた石が自分に返ってくることにもなりかねない。

辛 みんな加害者だったからね。右も左も在日も、北朝鮮が地上の楽園なんかじゃないことは、少なくとも途中からは分かっていたのよ。分かっていたけど誰も帰った人たちを救おうとはしなかったし、逆に見殺しにして、なかったことにしようとした。もちろん今も向こうにいるから声を上げられないという事情はある。私を含め多くは、自分自身の加害の歴史から、どうすることもできなかったんだということにして目をそらしたいのよ。

石丸 在日にとって帰国事業は、きちんと向き合わなくてはいけない「歴史問題」であると、辛さんは言われたことがある。ただ帰国事業は当時、北朝鮮や総聯だけでなく日本赤十字社も日本政府も、左傾化して貧しい朝鮮人を厄介払いできるとばかりに、推進しました。政党だって自民党から共産党まで一様に「人道的に素晴らしい」と賞賛した。労働運動家も学者も地方公共団体も、マスコミもそう。六〇年に朝日、読売、共同などが五社共同の取材団を送っていますが、当時の紙面は「(帰国者が)幸せに暮らしている」という記事のオンパレード。要するにみんなが背中を押して北朝鮮に送ったんです。だからこそ、もう五〇年間の後始末というか、歴史に向き合う作業をしないといけない。それを在日自身もやるというのは、確かになかなか勇気の要ることだと思います。どこから矢が飛んで来るか分からないし。「北朝鮮バッシングに加担する」という批判を受けてしまうかもしれない。

辛 結局、そうやって北朝鮮批判をするのは、朝鮮学校の子どもたちを叩いている「在特会」とか新しい極右の背中を押すことにどこかで繋がってしまう。だからものすごく微妙なハンドリングが必要になるだろうね。

石丸 今、現実に二〇〇人近くの帰国者が日本に戻ってきています。金正日政権は弱体化が進んでいるし、これからまだまだ日本に入ってくるでしょう。今後、彼、彼女らをどうやって受け入れるかという問題が必ず出てくる。だからこれは過去の責任の問題であると同時に、歴史問題にとどめておくだけではいけない、現在進行形の問題でもあるんです。日本に戻ってこようとする「元在日」の人たちを、当時背中を押した側全体で受け入れていく、そういう方向に日本の社会が進んで行かなくてはいけないと思います。一方で、跋扈し始めた排外主義勢力とも向き合い、闘っていかなくてはいけません。「在特会」のような団体を利することになるから帰国者問題に触れないということにはならないわけで、どっちとも向き合わなければならないと思う。辛さんは北に行かなかった者として、どう思いますか?

辛 地獄は続くな、という感じかな。行くも地獄、帰るも地獄……。とっても難しいね。この問題にどう向き合っていけばいいのかって考えると、感情的にとても厳しい。

内容的には納得できる部分は多々あります。

このサイトで辛淑玉さんや石丸次郎さんを隠れ従北だと非難していますが、期待のあらわれでもあります。唯一納得できないのは朝鮮学校に対する姿勢でしょう。なぜ間接的にでも擁護するような行動と発言をするのか理解できない。

朝鮮学校の子供を出国禁止(=北への渡航禁止)にすべきではないか?という質問に、「公権で強制するのは反対。在日朝鮮人内部の議論に任せるべき」という石丸次郎さんの意見は本当に信じがたい。連続殺人犯の家に子供を泊める行為を黙認するようなものです。

結局、北朝鮮が生命線だと言っている朝鮮学校を守ることにいいように利用されてしまっている知識人ということになるでしょう。

注目すべきポイントは「結局、そうやって北朝鮮批判をするのは、朝鮮学校の子どもたちを叩いている「在特会」とか新しい極右の背中を押すことにどこかで繋がってしまう。だからものすごく微妙なハンドリングが必要になるだろうね。」という辛淑玉さんの発言。

おっしゃる通りです。それを分かっているから、ネットで嫌韓&在日叩きを北と総連が組織立ってやっているわけです。それに踊らされる愛国馬鹿がなんと多いことか、、、。

在特会のような排外主義全開のクサレ右翼がいるおかげで、朝鮮総連は己の罪を隠蔽することができてしまうわけです。

そして、「私を含め多くは、自分自身の加害の歴史から、どうすることもできなかったんだということにして目をそらしたいのよ」という情緒に付け込まれて、「帰国事業」を真正面から直視することから逃げ、反ヘイト運動に逃げてしまうわけです。

この辺の人間の弱さにつけこましたら、北と総連は天下一品です。本当に許しがたい。

在特会はじめ、クサレ右翼と戦ってきたことは評価しますので、そろそろ北の暴君から朝鮮学校の子供を救出するための運動をリベラルの皆さんは開始すべきでしょう。