ハーバート・フーバー著『裏切られた自由』 一意見として聞くくらいが良い

訳者の渡辺惣樹氏の著書でも言及がありましたが、ヒトラーとスターリンが潰しあいをするのを傍観しておけば良かったという意見。

ある意味ヤクザ同士が殺し合いしてロクデナシが減るのは良いことだ、というのと一緒でしょうか。

これは微妙で、うまく対消滅してくれれば良いのですが、片方がスーパーパワーになる可能性もあります。

仮に、米国がポーランドを説得し、ドイツの通過を許し、ソ連への侵略をスムーズにできるようにしたとしましょう。

イギリス、フランス、米国は傍観者です。

ドイツ vs ソ連。

通常はありえないですが、周りが何もしなければドイツが勝つでしょう。それくらいあの当時のドイツは強かった。

そうなるとウラル地方の地下資源はドイツがゲットすることになります。

ドイツの科学水準と豊富な地下資源が結合したら、無双状態になります。

自民族優越主義の大陸のスーパーパワーとして台頭すること間違いなしです。

それが良いかと言われると微妙です。

南下したら中東の石油もゲットできます。

そこまでいったら世界最強国家の誕生です。

当然それを防ごうと米国やイギリスが動くでしょう。

めでたくドイツとの冷戦が始まります。

まぁそれは単純に考えた場合ですから、より良い未来へのたらればを言うなら、ドイツとソ連が激突したら、ドイツが圧勝しない程度にソ連に武器を支援し、膠着状態を作り出して米国が調停に乗り出す、というのが理想でしょうか。

それも想像通りにうまくいくかというと微妙で、中国と潰し合いしてた日本が、中国を裏で支援しているのは米英だ!と怒っていたのと同じように、ドイツから「裏でソ連を支援しやがって!」と恨まれるのは確実。

ソ連と停戦して、ドイツが西進して復讐してくるかもしれません。

何せ東進しようにも米英がソ連を支援するからうまくいかないわけですから、じゃあ次は根本原因を取り除いてから東進しよう!と思うでしょう。

ここまでくると振り出しに戻ったような気になります。

歴史の”たられば”はキリがない。

結局、色んな勢力が己の利益を最大化するためにしのぎを削っているのが国際政治です。

善悪二元論で解釈しようとしても無理がある。

誰が悪い、あれが悪いと言い出したら議論百出ですよ。調べれば調べるほど複雑すぎてお手上げ状態になる。

一通り調べるとやっぱり「共通の価値観」って大事だな~と思わされる。

で、その「共通の価値観」って何?と問われれば基本的人権でしょう。

原理主義的な人たちのせいで「人権=うさんくさい」というイメージが定着してしまいましたが、何にも難しいことなんてありません。

生命・財産・自由を大事にしましょうってことです。

言い換えれば、
「人を殺してはいけません」(=生命)
「人の物を強奪してはいけません」(=財産)
「言論弾圧したり思想教化してはいけません」(=自由)
ということです。

基本的人権というのはまさに基本的なことです。最低限と言い換えてもいい。

世界人権宣言とか読むと色んなものが付け足されてますが、あんまり増やさないほうが良いと思います。

「生命・財産・自由」が人権。以上終了です。

この最低限のことも共有できない相手と仲良くなんかなれません。

「人を殺してはいけません」という価値観を共有できない相手とどうやって交流いろと?

そういう点では、ドイツもソ連もアウトです。

ユダヤ人ガス室で殺すドイツ。

強制収容所をすでに完成させていたソ連。

怖すぎます。どうやって仲良くしろと?

米国が歴史から教訓を得るのであれば、「モンロー主義」という国際政治の現実に反する(=不可能な)ことをやっちゃダメだよね、でしょうか。

戦争ヤダ戦争ヤダと真珠湾攻撃されるまで放置せずに、全力で英仏支援してサクッとドイツ潰しときゃ良かったんですよ。

戦後処理も寛大にしてドイツ戦後復興を助け、ポーランドも支援。そうすればソ連の共産主義も拡大できません。

そこまで大勢が決してれば、日本もあきらめてたでしょう。仲間がまったくいない状態ではどう逆立ちしても勝てない。

めでたく中国大陸から撤退です。

日本にとっても悪い話しではない。

当時の中国大陸なんて軍閥戦国時代の泥沼状態です。

今で言えば米国の中東無限介入状態でしょうか。そこから逃げれるんですから長期的に見ればメリットは大きい。その方が日本人は幸せになれます。

とまぁ全部たらればの話しです。

空想にふけったり、フィクション小説として楽しむ分野でしょう。

 

話しを戻してハーバード・フーバー著『裏切られた自由 上・下』。この二冊は民主党ルーズベルトのまずかった点や失敗をまとめた辞書みたいな感じですね。そういう点では良い本です。

共産主義の細胞が米国の中枢にまで張り巡らされていたのは間違いない。

それが支配的な力を持っていたかと言われれば意見の相違があるでしょうが、一勢力として影響力を行使間違いない。こういう点が見直されているのも現在の状況を投影しているからでしょう。

つまり中国の内部浸透。孔子学院を橋頭保に大学に影響力を行使してますし、留学生を使って中国批判を抑圧しようとする。オーストラリアなんてえらいことになってます。

その中国の横暴に対する反発がこういう歴史見直しにつながっているのだと思います。

『裏切られた自由 上・下』は、あくまで米国がこうすれば良かった、あのように失敗した、という本であって、「日本が悪くなかった」とか「日本は素晴らしかった」という話しとは別問題だということは強調しておきたいと思います。