アメリカ世界戦略の大転換 「リベラルな覇権」から「オフショアバランシング戦略」へ

民主国家同士は戦争をしない?

  • 「自由を促進し、人権を守るのはアメリカの道義的・戦略的責務である以上、(相手国の内政から距離を置く)オフショアバランシングは(アメリカの価値からみても)受け入れられない」と考えもある。
  • むしろ、民主空間の拡大策をとり、世界から独裁制をなくせば、アメリカの安全も高まり、困難な事態を回避してくれるというのが彼らの論理的支柱。
  • 世界がリベラルな民主国家だけで構成されるとしても、それで平和的な世界になるかどうかはわからないし、軍事力で民主化促進策をとっても、それがうまくいくとは考えにくい。
  • むしろ、民主体制へ移行したばかりの国は紛争に陥りがちなために、民主化を通じて平和を促進するどころか、アメリカは終わりのない戦争を続けることになる。
  • 実際、グローバルな対テロ戦争及びその一環としてアフガニスタンとイラクに民主主義を根付かせようとする試みのなかで、アメリカはテロ容疑者を拷問し、ターゲットキリングを行い、アメリカ市民を電子的に監視するという行動をとってしまった。
  • 「リベラルな覇権」の擁護者のなかには、「より繊細な戦略をとっていれば、アフガニスタン、イラク、リビアでの壊滅的な事態を回避できていたはずだ」と言う者もいる。
  • しかし、民主化促進策は、われわれがあまり理解していない外国における大がかりな国家建設支援を必要とする。ワシントンの民主化の試みがなぜ失敗するかはこれで説明できる。
  • 相手国のそれまでの政治制度を解体して新しい制度に置き換えれば、必然的に勝者と敗者を作り出し、敗者は銃をとって反対運動を展開する。このような展開になれば、ワシントンの官僚たちは、アメリカの信頼性が危機にさらされていると考え、問題を解決するためにアメリカの軍事力を投入することが多く、その結果、紛争はますます激化する。
  • アメリカ市民が「リベラルな民主主義」を拡散したいのなら、自ら範を示すのが最善。
  • アメリカ社会が公正で繁栄し、開放的だと世界各国がみなせば、アメリカの制度を取り入れようとする。

 

意外と根強い人気のある「民主国家同士は戦争をしない」という方程式。

仮にその通りだとしても、民主国家は選挙を通してあっという間に独裁化することもある、という側面があることも事実です。

ナチスドイツだって選挙で生まれましたし、毛沢東だって仮に選挙をしていたら圧倒的な人気で国家元首となっていたでしょう。

サダム・フセインだって最初は国民から人気があったわけです。

ゆえに「世界中の国を民主化すれば戦争がなくなる」というのは説得力ゼロです。

軍事力で民主化促進策をとってもそれがうまくいく可能性は低く、むしろその結果起きたことはアフガニスタンでの泥沼です。

本当にリベラルな民主主義を世界に広めたいのなら、アメリカが自ら範を示し、世界中からアメリカの制度を取り入れたいと思わせるべし、とのこと。

それでリベラルの皆さんが満足の行くスピードで、自由・民主・人権が広まるかは疑問ですが、軍事占領下で民主化促進策を強行するよりははるかにマシでしょう。

結局、オフショアバランシング戦略とは、己の限界を知って、現実的にできることをやりましょう、ということなのでしょう。

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