北朝鮮プロパガンダ映画、伝説の「月尾島」防御戦闘

先日、『北朝鮮の全貌シリーズ 月尾島 [DVD]』を見ました。

北朝鮮の歴史を学ぶと、マッカーサーの仁川上陸作戦に対する対抗プロパガンダがこの「月尾島」防御戦闘であることに気づきます。

釜山以外占領された絶望的な状況を一気にひっくり返したのが、マッカーサーの仁川上陸作戦ですが、きっと悔しいのでしょう、北朝鮮では超少数の革命烈士たちが決死の戦闘で上陸を遅らせたという歴史プロパガンダで留飲を下げているようです。

李デフン中隊長が海岸砲中隊を率いて、「4門の大砲と数十丁の狙撃兵器で、駆逐艦3隻を含む各種艦船13隻を沈めた」という伝説の戦いになっています。

この月尾島戦闘は、バッチリ神格化されています。

ちなみに朝鮮学校の教科書にもしっかりと書かれています。

(※『現代朝鮮歴史 高級1』 P85-86)

 

月尾島防御戦闘1

(※洛東江界戦⇒洛東江戦線。たぶん誤訳)

月尾島防御戦闘2

 

う、嘘臭い、、、

などという疑問を口にしてはいけません。

なにせ神格化されてますから。

ヘタなことを言ったら収容所にぶち込まれます。

我々がやるべきことは、ただただ当時の革命烈士たちへの畏敬の念を胸に、感激に打ち震えることだけです!

信じる者は救われるのです!!

・・・

まぁ冗談はこのくらいにして、この歴史を知っていると、『北朝鮮の全貌シリーズ 月尾島 [DVD]』を、違った楽しみ方で楽しめます。

まず出だしから素晴らしい。あふれんばかりの期待感で胸がはちきれそうになりました。

「海辺の小石までもが人民軍兵士の戦功を語る」
「不滅の島 月尾島(ウルミド)!」
「仁川の沖合に侵入した米侵略軍五万を」
「わずか四門の大砲で阻止した」 (あれ?上陸を阻止したことになっとる 笑)
「月尾島の英雄たちの話しは」
「すでに広く語り伝えられている」

朝鮮学校の歴史教科書では、アメリカの大軍勢を少数の人民軍兵士で、「上陸を遅らせた」となっていますが、映画のオープニングでは「阻止した」と豪語していますね。

上陸を3日間遅らせるという指令を守った!ゆえに上陸阻止に成功!!という思考回路のようです。笑うしかない。

やはり気になるのは、祖国の英雄となられた李デフン中隊長でしょう。

教科書の写真はこれ。

李デフン中隊長_教科書

映画ではこちら。

李デフン中隊長_映画

李泰運(リ・テウン)が正しい漢字名のようです。

教科書の方は誤訳でしょうか。ハングルだと漢字が分かりませんからね。そもそも高校無償化問題に間に合わせるために急遽1週間で翻訳したものですから仕方ないでしょう。

この映画について内容を事細かには書きませんが、まぁツッコミどろころが満載でした。

海上を埋め尽くすアメリカ軍が現れたという報告が来たのに、まぁ落ち着いたもんです。どう考えても実際にはみんな大慌てだと思うのですが、淡々と対処していますね。リアリティが無さ過ぎて泣けてきます。

興味のある方はぜひ見てみてください。

戦闘1日目で私が笑ったポイントを箇条書きにしてみます。

  • 砲弾を節約することが大事だ!と言ったシーンの後に、戦闘機に向かって小銃を撃ってるいる姿に笑う。まさに無駄弾。
  • 李泰運中隊長が、機関銃(手に持てるサイズ)を空にぶっぱなして戦闘機を撃墜。んなバカな。
  • 18歳のかわいい女の子が、通信兵としてやってくる。イスから転げ落ちそうになった。
  • 3日間守れ、という指令が来る。なるほど、指令を守った=上陸阻止に成功、というロジックらしい。オープニングの「わずか四門の大砲で阻止した」に納得する。
  • 女子通信兵が、みんなの前で美声を披露。それをうっとりした様子で聞く兵士たち。いやいやいや、のんきすぎませんか?5万の米軍がすぐ目の前にいるんですが!?
  • 水が足りないと言われているのに、コップ一杯の水を女子通信兵が花瓶のお花にあげている姿には「んなアホな」と思わずつっこんでしまった。
  • 料理係が死ぬシーン。きっと泣くところなんだろうが、全然悲しくならない。死ぬ間際に金日成将軍の恩に報いるために、、、みたいな感じで色々言ってる姿には、思わず遠い目になる。
  • 戦闘一日目で死んだ同士たちとの永別式。岩に白いペンキで名前を書く。荘厳な音楽とともに感動のシーン。なんだろうけどまったく感動しない。あれ?これってコメディ映画??
  • 金日成将軍に解放される前は、日本人に鞭打たれて重労働をしていた。そう考えると祖国とは何か?祖国とは金日成将軍なのだ! ・・・お、おう。
  • 李泰運中隊長いわく、「われわれには音楽が必要だ。アコーディオンをひいてくれ」「それではみんな寝ないんですか?」「寝ない みんな色々なことを考えているのだ」。うん、言っている意味が分からない。寝かさないとダメでしょ、中隊長。
  • アコーディオン引きながら、ぐったりしている兵隊たちのところへ行く。映像を見る限り疲れきって寝ている兵士。アコーディオンを引きながらあらわれ、女子通信兵が歌いだす。そんなのんきな奴があらわれたら疲労困憊の兵士から、「寝かせろ!なめてんのか!!」と激怒されると思うが、みんなうっとりした表情で聴いている。笑うしかない。

こんな感じで戦闘1日目が終了。

アコーディオン引きながら歌い出すシーンは、そんな馬鹿なと腹がよじれそうになりました。

それにしても、ずーっと一緒のノリで、くっさーい演技が続くので飽きますね。面白さも同じことが続くと半減してきます。

飽きてきたな~、と思っていた矢先、大変テンションが上がるシーンが登場しました。

二日目の戦闘のさなか、通信が切れて中隊長が困り出すのですが、まさかこの流れは!?と期待感がふくらんできました。なぜかというと、朝鮮学校の歴史教科書にこういう神話があります。

導電性の皮膚を持つ革命烈士_朝鮮学校

「通信兵カン・ギュホは、切れた通信線を身体で繋いで部隊の通信を保障」

別記事で取り上げた、朝鮮学校の歴史教科書に書いてある、ありえない内容の一つなのですが、まさかこれは、、、と映画を見ながら思わず身を乗り出しました。

通信が切れる
⇒中隊長が困る
⇒女子通信兵がいなくなる
⇒通信がつながる
⇒指令を出して大砲部隊が米帝の駆逐艦を沈める
⇒万歳(マンセー)!!とみんな喜ぶ
⇒女子通信兵がいないぞ?と探し出す。

 

こ、これは、、、

 

来るか?

 

来るか!?

 

来ちゃうのか!!??

 

 

導電性の皮膚を持つ革命烈士

 

キターーーーー!!

 

さすが北朝鮮。期待を裏切らないです。

電線の間に人間を入れて音声通信するなどまず無理でしょう。

中学生レベルの電気の知識もないようですね。

死んだ女子通信兵の周りで悲しみにくれる兵士たち。バックミュージックは荘厳かつ悲哀に満ちた音楽。

いや、全然共感できないっす。目が点になりますよね。

そんなこんなで、めでたく二日目が終了。

 

三日目に入る前の深夜に、機雷を船に乗せて突撃するのですが、その時の映像が笑える。

機雷長が自分は大砲を撃てないからと、いかだに機雷を積んで敵の艦隊に突撃することを提案。

この時のノリがいかにも北朝鮮というかチュチェ国らしい。

最後の言葉は金日成将軍様への健康祈願で、大変勇ましいバックミュージックの元に突撃を敢行し、見事撃沈。

こんな大変嘘くさい神話を映画まで作って事実であったかのように国民に教える。この執念には頭が下がりますね。もっと別のことにその労力を使った方が建設的と思えますが、これぞチュチェ流と言ったところでしょう。

この偉大なる特攻を見たアメリカ人捕虜の演技が本当に笑える。

米兵捕虜が偉大なる人民軍の戦いっぷりを見て、畏怖を抱いたようです。

最後の言葉が、「マッカーサーに呪いあれ!」です。笑うしかない。

米兵使って、北朝鮮側の主張を言わせるわけですね。

この2つの動画見れば事足りる映画かもしれません。

さあいよいよ戦闘三日目、最終日です。

最終日の作戦が傑作。海岸に大砲を置いて、二人一組で決死隊を組み、砲撃される中を大砲の元まで走って行って、砲撃する、という作戦です。

意味が分からない。

主体(チュチェ)思想という空想の世界では、「海岸に置いた大砲が破壊されない」という前提が成り立つらしいです。

次々と決死隊が大砲の元まで走って行って、アメリカの艦艇をどんどん沈めていきます。

決死隊の兵士たちが次々と倒れていく。

でも大砲は無事。

んなアホな。

最後は、上陸してくる米軍に手榴弾と機関銃片手に、我らが革命烈士たちが最後まで戦っている姿で映画は終了します。

この神話は北朝鮮では壁画にまでなっていますね。バカバカしくて乾いた笑いしかでません。

月尾島_壁画

 

それにしても、北朝鮮映画の大方針ともいえますが、祖国愛を大いに煽ってきますね。

先祖の生きた大地、父の骨が眠る祖国、小鳥のさえずる愛する故郷。

そしてその愛する祖国を解放してくれた金日成将軍様!!

祖国とは何か?祖国とは金日成将軍様なのです!!!!

はいはいはいはい。

金日成と金正日が今まで何をやってきたか、こやつらの外道っぷりを知ってる人からすると、よくここまで恥知らずになれるなと本当に驚きます。

それにしてもこの神格化作業に余念がないところはさすがですね。

興味があればぜひ買うなり、レンタルするなりしてみてください。

 

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